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中村潤一の相場スクランブル 「バイオ、ゲーム、そして“低位株”が輝く」

minkabu PRSS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

●AIではなく人間のインテリジェンスも凄い

 将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段が怒涛の連勝街道を走っています。前回5月31日の当コーナーでも取り上げましたが、さらに快進撃が続いており、成り行き上フォローする“一手”となりました。現在、歴代単独2位となる25連勝継続中、しかもプロデビューからの話で、公式戦いまだ負けなし。これは本当に凄いことです。26局目は明日(15日)にC級2組順位戦で瀬川晶司五段と、そして仮にこれに勝利した場合は、17日に行われる東大1年生の学生名人・藤岡隼太アマとの朝日杯が27局目となり、俄然注目が集まることになります。将棋界では神谷広志八段の28連勝という、過去30年にわたってほぼ不滅とみられていた記録がありますが、それを抜くことも現実味を帯びてきました。

 藤井四段は“蜘蛛の糸”を手繰るがごとき超難関の奨励会三段リーグを14歳で1期抜けしており、だからこそ今があるわけですが、その時の成績は13勝5敗でした。プロ棋士になるや延べ25人を片っ端からなで斬りにする実力とは明らかに乖離(かいり)があります。では、そこにどういうカラクリがあるのか。時間軸を遡ってみると奨励会を抜けたのは昨年9月初旬の話です。つまり、半年強の間に藤井少年の棋力が驚異的に伸びたというのが、その答えとなります。アルファ碁が人類に勝つにはあと10年などと言われながら、ディープラーニングとモンテカルロ法の融合により数ヵ月で世界トップを凌駕する実力にのし上がった、それを彷彿とさせるごとき思考力の飛躍的な成長、人工ではない人間の脳もまさに恐るべし、なのです。

●「楽観」と「懐疑」の挟間で揺れ動く投資家心理

 上昇相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感とともに消えていく――。米著名投資家ジョン・テンプルトンの言葉として有名ですが、これは反対側からの視点でも原理は一緒です。下げ相場も同様に、楽観の中で覚醒し、懐疑のなかで静かに立ち上がる。ただし、2008年のリーマン・ショックを引き合いに出すまでもなく、立ち上がってから動き出すまでのスピードは上昇相場とは比較にならないくらい速い、ということを我々は経験則で知っています。ひとたび、信用収縮が起こるとそれまでの強気は突如として色を失い、ダムが決壊するように加速的に資金の流出が始まります。2000年のITバブル相場の崩壊もそうでした。

 では、現在の相場は果たして何合目まで来ているのか。16~17年の相場を振り返れば2000年当時の高揚感に似た部分も確かにあります。人工知能(AI)の躍進や、それと並行するスマートフォンの高機能化、自動運転技術の進展、データ爆発に対応したデータセンター増設などが、インフラ面の必要性から半導体の高集積化・大容量化にも弾みをつけ、3次元メモリーという革新ステージも生みました。

 半導体市況がスーパーサイクルに入ったとの観測が強まるなかで、「ITバブル相場の再来、その入り口に立つ」という認識が徐々に広がり始めた矢先、ナスダック指数の急落が水を差した格好となりました。投資家としては思わず身構えてしまうところです。しかし、これが相場の歯車を逆回転させる前兆かと問われれば、おそらく違うといってよいでしょう。今がITバブル相場の入口にあるかどうかは置くとして、既に出口付近にいるというのは、少なくともかなり可能性の低い仮説といえそうです。

●ファンダメンタルズに裏切りはない

 2000年のITバブルの時、PER(株価収益率)から割高感を覆うすべはなく、代わりにPSR(株価売上高倍率)を用いるケースが増えました。先行投資などにより利益水準は低くても、売り上げが伸びていれば、それは成長企業の証、決して割高ではないという考え方です。しかし、オーソドックスな指標を隅に追いやることは、その時点で相場に歪みが生じていることを暗示する事例であり、実際、その後ほどなくして日米ともに雪崩を打つような下げに見舞われました。

 しかし、今はPERという王道指標を堂々とモノサシに使っても、日米ともに割高感はありません。株は基本的に需給に左右されますが、長期的視野に立てばファンダメンタルズから大きく外れることはないのです。四半期ベースでみた米IT系企業の利益も総じて好調な伸びを示しており、佳境入りはまだ先。ITバブル再来があるとすれば、そのシナリオがマーケットに描かれるのはこれからです。

●目先は注意要する相場も個別物色に活路

 ただし、目先的には注意が必要なことも事実です。当面の相場のカギを握るのは為替の動向でしょう。米国時間14日のFOMCでの利上げが確実視されるなか、米国株市場はいうまでもなくこれを既定路線として織り込んでいるわけですが、マーケットの関心は年内の利上げスケジュールに移っています。イエレンFRB議長から債券再投資の縮小などバランスシート調整について、何らかのメッセージが出るとの思惑が高まっており、投資家の不安はここに集約されています。仮にイエレン議長の会見を受けて、一時的にせよ円高が進行すれば、主力株は手掛けづらく、中小型のテーマ株物色の流れが再び強まりそうです。

 東証1部は日経平均2万円近辺ではっきりしない動きですが、高値圏を走るマザーズ指数が象徴するように、比較的時価総額が小さい値動きの軽い銘柄については、強烈に物色の矛先が向いています。マザーズ指数の上昇は、 ゲーム関連人気に加え、ここにきてアンジェス MG <4563> [東証M]が主導したバイオ関連の動意が背景にあります。当面は、この周辺から出世株が相次ぐ可能性が意識されます。

●任天堂の輝きとアカツキの勢いが波及するか

 ゲーム関連は4月中旬以降の任天堂 <7974> の動きが全体にポジティブな影響を与えており、直近は米ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲームイベント「E3」も刺激材料となっています。もっともE3出展企業のみがターゲットに買われているというわけではなく、今後も断続的に幅広く資金流入が続くと思われます。任天堂は別格として、中軸となっているのは、ソーシャルゲーム開発・運営で世界展開するアカツキ <3932> [東証M]。業績の変化率が抜群であり、この業態にして市場コンセンサスを基にした今期想定PERが20倍強となれば、上値余地は大きいと考える投資家も多いはずです。

 このほか、カヤック <3904> [東証M]、ユナイテッド <2497> [東証M]などが注目されるほか、信用取組が売り長の状態で日証金では逆日歩のついているネクソン <3659> などもマークされます。15年1月以来の高値圏を走るブロッコリー <2706> [JQ]も面白そうです。

●休養十分のバイオにもスポットライトが当たる

 バイオ関連ではアンジェス MGがまさに火柱高を演じていますが、昨年も2月から4月下旬にかけて株価を4倍化させる大相場となっており、その時の高値943円を抜くかどうかが注目されるところです。特別な機能を持つ遺伝子を活用した血管の遺伝子治療について、10月をめどに厚労省に製造販売承認を申請すると伝わったことが、起爆材料。この株についてはもはや“観賞用”としても、ここで醸成された流動性が横に広がりをみせる公算は小さくないと思われます。

 ナノキャリア <4571> [東証M]、カイオム・バイオサイエンス <4583> [東証M]、サンバイオ <4592> [東証M]、テラ <2191> [JQ]などのほか、手堅いところでは黒字バイオベンチャーで双璧のペプチドリーム <4587> 、そーせいグループ <4565> [東証M]、さらにJCRファーマ <4552> などに着眼しておきたいところです。

●風雲急の気配漂う低位株集団も注目場面に

 ここにきて低位株の一群も風雲急を告げる気配。エンシュウ <6218> は半導体レーザーやファイバーレーザーなどレーザー工法の開発で高実績を有しており、14日はトヨタ自動車 <7203> などとの共同開発による特許取得を材料に、前場取引時間中に噴き上げ、30円高の117円でストップ高比例配分となる大立ち回りをみせました。これに刺激される形で低位株人気が加速する可能性もあります。

 PBR0.5倍と超割安圏にあり、往年の仕手材料株でもあるルック <8029> 。時価はまだ270円近辺ですが、15年3月30日の戻り高値266円を抜いたことで、300円台での活躍も視野に入ってきました。

 電線地中化関連で小池都知事絡みで人気化素地のある沖電線 <5815> も注目。200円台前半の株価には出遅れ感があります。

 そして、豊洲市場への移転関連では日本エンタープライズ <4829> に穴株妙味が浮上しています。日本エンターはゲーム関連株やブロックチェーン関連としての切り口に加えて、子会社のいなせり(東京都中央区)が築地市場の水産仲卸業者団体と連携して鮮魚のEC事業を展開、これが200円台の株価を強く刺激するケースも考えられます。

●番外編でITbookに再度注目

 最後に番外編としては、今年2月8日の「マザーズ開眼!クラウド関連が全面開花へ」にて400円台で取り上げ、1ヵ月後に828円まで上昇し大成功を収めたITbook <3742> [東証M]。その後調整を入れましたが、改めて注目局面にあるようです。何といっても業績変化率の高さが際立ちます。営業利益は17年3月期に前の期比3.9倍の1億5800万円と急回復を果たし、18年3月期についてもシステム開発と技術者派遣がいずれも大きく伸びて4割増益の2億2400万円予想にあります。

(6月14日記、隔週水曜日掲載)

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