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フィンテックだけじゃない?上場企業がブロックチェーンに取り組むわけ【前編】

筆者: コイン東京

この度は東証一部上場企業のモバイルファクトリーのCOO 深井未来生氏に記事を寄稿して頂きました。
  • ・ブロックチェーン業界の実相はどのような状況か
  • ・ブロックチェーンはどのようなビジネスを造りあげるのか
  • ・ブロックチェーンが社会に浸透するための課題とは
業界の最前線でブロックチェーンビジネスを推し進めるモバイルファクトリーだからこそ見える「考察」を綴って頂いています。

はじめに

「ブロックチェーン」という用語はいまやバズワードの様相を呈しており、日々多くの論考や記事が生み出されておりますが、文脈によりどのようなことを指しているのか、注意ぶかく見極める必要があります。

業界に詳しくない一般の方にとっての「ブロックチェーン」のシンボルといえばビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)だと思われますが、残念ながら、この分野のニュースにはネガティブなものも多いようです。

いっぽう、ブロックチェーン技術そのものへの注目度は非常に高く、この技術を活用して課題解決を目指す実証実験は、政府や大企業も深く関わる形で実にさまざまな分野で行われております。

本稿では、「ブロックチェーン」が見せるそのような様々な顔を紹介しつつ、上場企業(公開会社)がこの分野に取り組むことの意義について論じたいと思います。
 

ブロックチェーン業界の実相

ブロックチェーン業界は、内部にいる立場から見てもあまりわかりやすい業界とはいえません。フィンテックの分野では大手金融機関がブロックチェーン技術の活用を早々に打ち出し、様々な実証実験フェーズに入っております。

何らかの価値を定量的に切り分けて単位を付けたり、価値流通に改竄不可のログを残せることはブロックチェーン技術の真骨頂であり、ビットコインの誕生と普及が「ブロックチェーンのデビュー」だったことがその象徴です。

フィンテック以外の分野でも、流通トレーサビリティ、IoT、広告技術、ゲーム内アセット、デジタルライツ管理などへの応用が期待されており、それぞれにプレイヤーがいて、それぞれの分野における技術応用に心血を注いでいます。

そして、これらすべてがブロックチェーン業界を構成しています。実相がたいへんつかみづらく、よくいって有象無象です。ひところに比べれば、自家製コインを発行して値上がり期待を演出した資金調達を促す、いわゆるグレーなICO屋もだいぶ少なくなった印象があります。

日本のこの分野の規制当局は金融庁ですが、同庁から繰り出される段階的な法解釈等により、ICO関連のグレーゾーンもだいぶ狭くなってきました。いっぽうで、毎年のように億円単位の暗号資産の流出事件が起こり、そのたびにブロックチェーン業界にまとわりつく胡散臭さのチェーンがなかなか途切れません。

多くのイノベーションの初期フェーズがそうであるように、今のブロックチェーン業界に向けられる目には期待感と不信感がないまぜになっています。政治イデオロギーの相克にも似た、ある意味カオスな段階であるともいえます。ガートナーのハイプ・サイクルに従えば、どうでしょう、《過剰期待の頂き/Peak of Inflated Expectations》から《幻滅の窪地/Trough of Disillusionment》に至る過程のどこかでしょうか。

インターネットに選択肢を

現代社会の基盤をなすインターネットは、単に日常生活を便利にするだけでなく、いまやあらゆる産業のインフラとして機能しております。また、文化の伝播や個人の社会性の獲得にも大きな役割を担っております。

現時点(2019年7月)のインターネット普及率は世界で約6割(約44億人)であり([Digital2019](https://wearesocial.com/blog/2019/07/global-social-media-users-pass-3-5-billion) /WeAre Social)、今後も年々増加していくでしょう。

ビーバーにとっての堅牢なダムは、種存続のために重要ではありますが、ダム自体はビーバーの身体の一部ではありません。こういうものをその種にとっての「延長された表現型」といいますが、インターネットは、生物史上、ヒトという単一生物種が生み出した最強の「延長された表現型」といえるかもしれません。

そのようにヒト社会そのものの存立基盤にもなりつつあるインターネットが、GAFAに代表される大手プラットフォーマー数社の統制下にあるのが実態です。インターネット上で何かをふるまう際に、GAFAの目から離れることは困難です。もちろん、彼らは禍よりは福をもたらす存在であり、少なくともそうであるように努めております。

しかし、欧米や日本等の世界各国の政府当局がプラットフォーマーたちに厳しい目を向け、規制のあり方を模索していることは、裏を返せば国家が恐れる程に影響力の大きい存在であるということでもあります。

クラウド、IoT、AI、高速通信、という新しい潮流がインターネット業界を賑わせております。ブロックチェーンは最近この列に加わり、インターネットに選択肢を与えるもの、として存在感を際立たせました。

そして、ブロックチェーン技術が本質的にそなえる「分散性」は、GAFA等の中央集権に依存しない組織及びサービス設計が視野に入っております。「自律分散型組織」(Decentralized Autonomous Organization: DAO)と「分散型アプリケーション」(Decentralized Applications: DApps)が、その非中央集権形態の具体的な帰結です。

よくよく分散されたDAOによって、よくよく分散されたDAppsが運営される、それはブロックチェーンが創出するインターネット世界の新しい選択肢です。GAFAによる既存インターネットを壊してすべてをゼロから作り変えようとしているわけではありません。インターネットは既にとても便利であり浸透しているので、わざわざ置き換える必要はありません。

ただ、少なくとも既存のGAFA型中央集権インターネットの一部は、ユーザーが意識するかどうかにかかわらず、ブロックチェーンという新たな選択肢を得て、その一部に分散性を取り込み、より便利によりおもしろいものになる可能性を秘めております。インターネットそのものが進化しようとしているということになります。

 

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