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フィンテックだけじゃない?上場企業がブロックチェーンに取り組むわけ【後編】

筆者: コイン東京

フィンテックだけじゃない?上場企業がブロックチェーンに取り組むわけ【前編】では「ブロックチェーンの実相」や「インターネットの現状」についてご紹介いただきました。【後編】ではブロックチェーンの社会実装への課題、そしてブロックチェーンが社会実装された未来について考察を頂きます。

【前編】フィンテックだけじゃない?上場企業がブロックチェーンに取り組むわけ

新しい技術を社会実装するために

米トランプ大統領は、Facebookリブラを念頭に「銀行になりたいなら規制を守るべき」と発言し、主要7か国(G7)作業部会では「リブラに最高水準の規制を適用する」と結論づけました。まったく当然です。世界中の金融機関が、それぞれの国が定める厳しい規制に従い、スピード感を犠牲にする不自由さを甘受しているのは、彼らが根っから保守的で頑迷な考えの持ち主だからではありません

社会の血であるお金を扱う商売である以上、反社会的勢力を利するマネーロンダリングの抜け道を塞ぎ、情報の非対称性につけ込んだ無節操な利子率の設定に歯止めをかけ、ある大企業がある日突然経営破綻したとしても破綻の連鎖を抑制できる仕組みを整備する必要があります。

面倒で地道で時間のかかる環境整備だとしても、最低限の義務として、それらを通じて初めて、健全な金融システムの根幹である「信用創造」それ自体の信用力が担保されるのです。そのため、金融をやりたいのであれば金融規制を受けることは避けられず、インターネット業界の世界覇者であるFacebookが、世界に冠たる重鎮100社の連合体を引き連れて業界参入を表明したとしてもその例外ではありません。

ブロックチェーンは、技術だけを取り上げればイノベーティブであり、既得権のディスラプターであり、既存価値観のパラダイムチェンジャーかも知れません。しかしながら、実践フェーズにおいては、既存の法的枠組みを無視することはできません。ブロックチェーンを国政選挙に応用できれば便利だし若年層の投票率も上がりそうですが、そのためには超えなければならない法律や規制の枠組みがあまりにも多く存在します。

スタートアップ企業が規制に目をつぶりながら「えいやっ」と何かを進めることも、イノベーション実現の為には時には必要なことかもしれません。しかし、有権者・納税者、そして未来の国民に責任を負う国家がそれをやるわけにはいきません。新しい技術を健全な形で
社会に取り込むためには、それなりの時間とお作法が必要です

健全な業界の発展のための公開会社の役割

ブロックチェーン技術を健全に社会に実装していくためにはどうすれば良いか。例えば、所有権の移転にブロックチェーンのスマートコントラクトを活用しようとした場合、民法だけでも第176条(物権の設定及び移転)、第206条(所有権)や第555条(売買)などが絡みます

対象がデジタル資産だった場合は、そもそも所有権が及ぶのかという論点(民法第85条など)も含めて問題が複雑化します。そのデジタル資産に通貨性がある場合は、資金決済法を始めとした一連の暗号資産関連法などへの適合性が課題となります。

法律がクリアできても、会計や税務の面では、また異なるアプローチが求められます。顧客から得たトークンの価値認識の方法、売上なのか預かり資産なのか、物流の各段階における在庫の価値をどう考えて会計や税務に落とし込むか。それらの合意形成を、法律・会計その他の専門家を交えながら規制当局と詰めていく必要があります。

業界が健全に発展する、という意味は、一部のコアな業界人にだけ受ける内部の論理やおもしろさだけではなく、一般層にも安心され、信頼された状態でヘルシーに広がっていく状態を指します。しかしながら、「ブロックチェーン=仮想通貨=なんとなく危ない」と考えている層はまだ多いのが実態です。

彼らにとっては、良いニュースよりも悪いニュースが目立つ業界でもあります。そんな彼らにも安心され、信頼されるプロセスが必須です。公開会社は、その収益の源泉について、そしてその活動の実態について一般の投資家に対する説明責任を負っています。

ある公開会社が何らかのブロックチェーン関連サービスを手がけるとしましょう。その会社は一般の投資家にサービス情報を届ける前に、上記で示した専門家や規制当局との綿密な折衝は当然として、その折衝の内容を会社の株式が上場している市場の該当部門(東証であれば上場部)に説明し納得を得る必要があります。その際に市場側は、当然「一般の投資家にとってわかりやすく必要なリスクが余すことなく記載されているか」という観点でチェックをすることになります。

もちろん、専門性が高い分野であれば、どうしても表現の噛み砕き方には限界があり、すべての投資家が理解できる内容になっていない可能性もあります。しかしながら、投資家への適切な情報提供による証券市場の健全な発展を優先し、最終的には責任を追求される可能性もある市場側のチェックは、会社にとってはそれなりのハードルであり、若い業界特有のオフレコ的な論理や用語で煙に巻く、という手法は通用しないわけです。

ですが、結果的にそのことが業界全体の信用を得られることに繋がります。ブロックチェーンの発展のために求められていることは、まさにこのような健全さと透明さです。もちろん、公開会社のみがこの分野のプレイヤーであるべきだという意味ではありません。どんな分野でもそうであるように、それぞれのステージの会社がそれぞれにふさわしい役割を果たすことが、イノベーションの定着に資するものと考えます。

人間臭さを残す公開会社の意義

ブロックチェーン技術によるスマートコントラクトに加えてデータ通信網の高速化・遍在化が進めば、あらゆる通信や取引にかかるコストが極小化されます。これが何を意味するかというと、従来経済学が認識しつつも理論構築のうえでは捨象していた「取引費用」「摩擦係数」がゼロに近づき、結果的に理論と実態の距離が縮まる可能性が高いということになります。

共産主義は不完全できまぐれな人間が管理したから失敗したのだという意見があります。現時点で思考実験の枠を超えないにせよ、人智の及ばぬほどパーフェクトで合理的な判断能力をもったAIが管理する「デジタルレーニン主義」なるものが構想されたりもしております。(そのまんま「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界観そのものですね)

「AI x ブロックチェーン」による未来の超効率社会において、古びた共産主義がその積もった埃を払い、グローバルの表舞台に登場することはあるのか。あるとすると、中国に代表される国家資本主義の発展形として誕生するのか、むしろ新興国の下剋上のような形で電撃的に採用されるのか。

そんな未来図もあながち絵空事とはいえない状況において、アダム・スミスの見えざる手の系譜にある我らが市場原理、すなわち「人間臭くて不完全な」自由主義型資本主義、個々の人間が持つ価値判断の差異を利用する裁定取引の積み重ね、そういった「柔らかさを残す原理」のガバナンス下にあるのが公開会社です。

人間の欲望や利己主義をシステムに取り込み、さらには人間のエラーや不合理性を前提にしながらも、 それでもなんとか信頼に足る存在を模索した成れの果てが公開会社といえます。その意味でも、公開会社の役割は今後も決して減少しないと思われます。

モバイルファクトリーの取り組み

東証一部上場会社であるモバイルファクトリーは子会社ビットファクトリーを立ち上げ、「Uniqys Project」(ユニキスプロジェクト)という名称のもと、分散型アプリケーション(DApps)普及のハードルを下げるサービスを複数手がけております。

開発者にとってもユーザーにとっても、 まだまだ普及に課題が多いのがDAppsの現状です。Uniqys Projectでは、そのような課題を解決すべく、開発者のハードルを下げるためのソリューションとして、一般的な開発言語でDAppsを開発することができる「Uniqys Kit」(ユニキスキット)、専用ブラウザがない環境でもDAppsを利用できる環境を提供する署名サービス「Quragé Link」(クラゲリンク)、暗号資産を持たないユーザーが法定通貨のままDAppsを利用することを可能にする「TxProxy」(トランザクションプロクシー)などを手がけております。

また、ユーザーのハードルを下げるためのツールとして、DApps検索サービス「FinDApps」(ファインダップス)、暗号資産ウォレット機能のついたブラウザ「Quragé」(クラゲ)などを提供しております。終了したゲーム資産を半永久的にブロックチェーンに刻む「HL-Report」という実験的サービスもリリース済みです。

ブロックチェーンの健全な発展のため、当社の役割はそれなりにあると自負しております。Facebookリブラの一般層への普及にはまだまだ時間はかかるでしょう。我々はそこまで大きなプロジェクトを手がけるわけではないものの、慎重に進めようとしている点は同じです。

スタートアップに比べて多少時間はかかるかも知れませんが、そのぶん、各ステークホルダーへの説明責任を果たしながら、そして、公開会社としての責任を心に刻みながら、しっかりとインターネット社会の未来を切り拓きたいと考えております。今後ともご支援をいただければ幸いです。

 

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