2019年に、金融庁認定の仮想通貨自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会によって、国内の最大レバレッジが4倍まで引き下げられました。それまでは、最大で25倍のレバレッジが使える取引所もありましたが、2019年中に全て4倍となりました。この主な目的は、投資家の資産保護だそうです。
しかし、金融庁から仮想通貨の証拠金取引におけるレバレッジを2倍まで規制することが発表されました。これは今年の春には施行される予定のようです。4倍への規制は仮想通貨業界による自主規制的なものでしたが、今回の2倍への規制は国が仮想通貨の証拠金取引に対して行うものとしては初めてとなります。
このレバレッジ規制は本当に正しいのか、また効果はあるのかなどに関して、ビットコインのレバレッジ取引をビットフライヤーで行っていた筆者が考えていきたいと思います。なおビットフライヤーでは、2019年7月30日の早朝までレバレッジは最大15倍までかけることができました。
レバレッジ規制のメリットとデメリット
メリット
レバレッジ規制においてのメリットは、前述したようなハイリスクハイリターンの取引を制限し、投資家の資産保護につなげることだと考えられます。
ビットコインをはじめとした仮想通貨では、時に価格が1日で10%以上動くことがあります。その日にレバレッジ10倍をかけてポジションを保有しており、逆方向へ相場が動いた場合、資産は大きく減少してしまいます。確かに、これはハイリスクと言えます。
投資を始めたばかりの方には、証拠金維持率のギリギリになるほど保有できる限りのポジションを持ってしまう人もいます。この場合、レバレッジを強制的に低くしてしまうことは「投資家保護」といった目的においてはメリットのひとつだと思われます。
デメリット
しかし、使えるレバレッジが高くても証拠金維持率を高くしておけば危険ではなく、投資戦略の幅は広がります。
例えば、自分にとって勝てると確信した局面では、レバレッジをかけてポジションをたくさん保有できると一気に資産を増やすこともできます。また、維持率を調整することで大きな損失に耐えながらロスカットされることなく、幅広いポジションを構築していくこともできます。そもそも小さい金額で大きな金額を動かして取引できるため、自分が被るリスクを小さく制限してトレードすることができます。
自分の思った通りの値動きになったにも関わらず、大きなポジションを保有できないことは、やはりデメリットとなります。
また、レバレッジが低くなると、同じ量のポジションを保有した場合にロスカットされやすくなってしまいます。
取引例
レバレッジ取引において、証拠金維持率は有効証拠金÷必要証拠金×100で計算されています。そして国内最大の仮想通貨証拠金取引の出来高を誇るビットフライヤーでは、証拠金維持率が50%を下回ってしまうと強制ロスカットされるルールがあります。
例えば、10万円を入金してトレードした場合、レバレッジ15倍の場合とレバレッジ2倍の場合では、それぞれ150万円と20万円が動かせる金額の限界であることが分かります。
ビットコイン価格が90万円として計算してみましょう。仮にビットコインを0.2BTC保有した場合、レバレッジが2倍の場合は証拠金維持率が110%となります。対して、15倍の場合は830%の維持率があります。
もしビットコインの価格が25万円以上逆行した場合、レバレッジが2倍の場合は証拠金維持率が50%を切ってしまうため、ロスカットされてしまいます。しかし、レバレッジ15倍では400%以上の維持率を保つことができるのでロスカットされることはありません。もしレバレッジが2倍となった場合ロスカットされないためには、さらに追加資金を入金しなければいけません。
このようにレバレッジに対して維持率をコントロールすることで少ない資金で取引を行えるため、高いレバレッジはデメリットばかりではないのです。
まとめ
レバレッジ規制の議論には、実際の利用者が議論の外におり、勝手に進んでいる印象を受けます。1度も取引を行ったことがないような人たちが、レバレッジを引き下げれば正しく健全なマーケットになり、それが投資の初心者の方々を守る仕組みになると考えているのではないでしょうか。その人達が、レバレッジの仕組みや投資家の気持ちを理解しているのは疑問です。
利用者の多くは、そもそもレバレッジの仕組みを理解して取引しているため、自身でレバレッジをコントロールしながら取引を行っています。そのため、レバレッジが引き下げられると、規制の行われていない海外取引所へ移行するのではないでしょうか。そうなると、国内取引所は海外取引所にビットコインを送金するためだけに使用されるようになり、国内の取引サービスの発展はさらに遅れることでしょう。
レバレッジ引き下げに関するアンケート結果↓
仮想通貨の証拠金取引のレバレッジ2倍への引き下げに反対かどうかのアンケートを取ります。
— 児山将@フリーランス投資家 (@goahead5055) January 10, 2020
参考:仮想通貨取引、証拠金の2倍まで 金融庁が新ルール:日本経済新聞 https://t.co/BYRijbaAah
税率についても株式やFXなどの他の金融商品と違い、仮想通貨は雑所得扱いでであることも投資家の観点に立って考えられているとは思えず、改善される必要があると考えています。
利用者にとって、違和感のないフレンドリーな法律や税制などの仕組みが整うことが国内の仮想通貨の発展には必須でしょう。今後は、そういった議論の中に利用者が加わり、業者や当局と協議を進めるようにして欲しいと強く願っています。