先週、ビットコインは250万円台から300万まで約20%の反発を見せました。にわかに相場反転の兆しがあったものの、新たな悪材料の出現が止まらず上値を押さえています。
材料を確認しておきましょう。
・米欧英の景気後退懸念
・ヘッジファンドの清算問題
米欧の景気後退懸念
ここ2カ月ほど、経済指標や原油価格の100ドル割れもありインフレピーク説が現実味を帯びてきています。
しかしながら、長引く高インフレにより2023年には景気後退に入ると予想していた英国ばかりでなく、欧州、米国も景気後退懸念が台頭してきました。
7月6日に発表されたドイツの貿易収支は、1991年来の赤字に転落。赤字幅は過去最大となったことで、域内リセッション懸念が急浮上。長期にわたりドイツ経済をけん引してきた貿易輸出ですが、ウクライナ戦争に端を発するエネルギー、食品価格の高騰により輸入額が膨らみ、ウクライナへの輸出も減少したことで赤字に転じました。
さらに、ロシアからドイツに天然ガスを送る主要パイプラインである「ノルドストリーム1」が11日から21日まで定期保守点検に入っており、それが再開が危ぶまれていることも、欧州圏のリスクオフに拍車をかける要因となっています。
また、米国では不動産市況の悪化が進んでいます。住宅ローン金利が5%以上と高止まりし、販売が鈍化していました。このことから住宅価格が急落しており、地域によっては2割引き下げても売却できないケースもあるそうです。
過去にも、不動産市況の悪化は金融危機をもたらす要因となってきたため、今後の金融市場の先行きを不安なものにしています。
ヘッジファンドの清算問題
テラショックに端を発する仮想通貨相場の暴落により、多くのヘッジファンドが苦境に陥ることとなりました。
先週は、大手交換業者のFTXとバイナンスの創業者はこれらを救済するという発信をしており、相場の反転につながりました。
大手仮想通貨ファンドであったスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrow Capital)も破綻に陥ったひとつですが、創業者らが所在不明になっているとの報道がなされています。ブルームバーグの報道によると、シンガポール事務所はもぬけの殻となっており、直近では人の出入りは確認されていないそうです。
これによりファンドの精算が進まず、様々な問題がでてくることになります。そのひとつとして、GBTCの割り当てが差し押さえられるということがあります。
GBTCとは、グレイスケールの運用するビットコインの価格と連動した投資信託。一般の株式と同様に売買が可能。機関投資家や米証券取引委員会(SEC)から認められた認定投資家を対象に提供されており、投資家にとってはビットコインの現物を売買・保有しなくて良いというメリットがある。
マウントゴックスの精算がいまだに進んでいないように、仮想通貨関連の清算は例が少ないために非常に混乱を招き進展が遅くなりがちです。
債務者は株式の現物支給を受けることができるのか?それとも、先に清算しなければならないのか?などの問題もあります。
また、GBTCは手数料や流動性、換金リスクなどの関係で、通常ビットコイン価格より割安となっています。
さらに、GBTCはETFへの転換を目指しているため、そうなった場合は価格の大きな上昇が見込まれます。
高悪材料が織り合わさっていることなど考えた場合、残っている資産がかなり長い間ロックされたままとなり、売却リスクもなければ新規マネーの流入もないことになります。
なお、同社は3月末時点では推定100億ドル(約1兆3500億円)の資産を運用していました。
現在の状況に関して、仮想通貨分析企業コインシェアの最高戦略責任者であるメルテム・デミラーズ氏は「まだ下方調整の余地がある」と分析。ただし、ビットコインが1万4000ドル(約190万円)を下回ることはないと予想しています。