2022年9月15日に完了したことが告知された、イーサリアムの「マージ」アップデート。その後についてのレポートと検証を前編より行っています。

後編では「マージ」アップデート後のイーサリアムについて、そしてマイニングについての考察をしたいと思います。

【前編】イーサリアムの大型アップデート「マージ」でETHはどう動いた?

金融市場全体がリスクオフに傾いている

「マージ」アップデート後に、イーサリアムのトークンであるETHはまさかの下落となりました。しかも下落幅は大きく、「マージ」アップデートに対してマーケットは否定的なのかと見る向きもありますが、実際のところはそうでもないようです。

一番に考えられる下落要因は、前編で述べた「噂で買って事実で売る」という相場格言通りの動きになったのではないかという説。

それともうひとつ、ETH下落の原因として考えられるのが折からのリスクオフ相場です。

金融商品にはリスク資産と安全資産の分類があります。リスクを積極的にとって大きなリターンを狙う商品はリスク資産と呼ばれ、株や金利の高い国の通貨などが挙げられます。その逆に安全資産とはリスクの低い資産のことで債券や現金、ゴールドなどが分類されます。

相場は常にリスクオンとリスクオフを繰り返していますが、2022年9月はリスクオフムードが漂う相場です。

理由はたくさんありますが、アメリカがインフレ退治のために利上げを繰り返していることで株式市場から資金がドル買いや債券買いに流れ、リスク資産が弱含みになっています。

仮想通貨はリスク資産の代表格と見なされているため、イーサリアムもその流れを受けて売られたというわけです。

イーサリアム「マージ」がビットコインに及ぼした影響

リスク資産の代表格である仮想通貨(暗号資産)が売られたのであれば、ビットコインも売られていると考えるのが普通です。それではイーサリアムの「マージ」アップデートが完了した9月15日前後の値動きはどうだったのかというと、こちらも大幅下落でした。

以下がその当時のチャートで、青い線がビットコイン、オレンジ色の線がETHです。

どちらも9月15日付近に大きく下げていることが分かります。これはおそらく、仮想通貨全体が売られた結果でしょう。その後で興味深いのが、イーサリアムがさらに下げているのに対して、ビットコインはもみ合いになっていることです。

途中までは仮想通貨全体の影響を受けたものの、その後はイーサリアム特有の事情で下げていると見るのが妥当でしょう。「マージ」アップデート後に下げたETH、それではイーサリアムへの期待感もここまでなのかというと、そんなことはありません。むしろイーサリアムへの期待値はますます高くなると見るべきでしょう。

イーサリアムはPoS銘柄の筆頭格に

「マージ」アップデートが目指したのは、PoWからPoSへの移行です。これによりイーサリアムのブロックチェーンを維持するのに必要な電力消費は99.99%削減され、仮想通貨は環境負荷が高いとのイメージを払拭しつつあります。

しかし、ビットコインをはじめとするPoWの仮想通貨 は依然としてたくさんあります。今後、環境との調和がとれているイーサリアムに新たな資金が流れ、イーサリアムへのシフトが起きると他の仮想通貨 も追随してPoSに移行するのは自明の理です。ビットコインにすらそんな噂があるので、今後はイーサリアムが仮想通貨の代表格として台頭する可能性は大いにあります。 

しかもイーサリアムのマイニングはブロックチェーンへの台帳記録ではなく、ETHを一定量持っておくだけで可能です。最低額が700万円ほどなので決してハードルが低いとはいえませんが、投資対象としてのメリットはますます高まっていくでしょう。


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