9月14日前後に予定されているイーサリアムのマージ(The Merge)が、材料不足にある仮想通貨(暗号資産)のテーマとして大きな注目を集めています。
●マージ(The Merge)
イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行する大型アップグレードのことです。
イーサリアムの開発はこのために進められてきたともいえるため、歴史的瞬間の到来が間近といえます。
しかしここで、仮想通貨独自の問題が発生しようとしています。
イーサリアムのブロックチェーンをマイニングしているマイナーが、アップグレード後もPowのチェーンの採掘を続ける可能性があります。それにより、PoWとPoSをそれぞれ採用した2種類のイーサリアムが誕生する可能性があるのです。
実際に、The DAO事件でハードフォークした後に、イーサリアムはイーサリアムとイーサリアムクラシック(ETC)のふたつに分かれました。
ただ、取引所がPoWのイーサリアムを取り扱わなければ、ほぼ無価値といえるでしょう。
現時点において、BitMEXやPoloniexはETHPoW先物の提供を開始。価格は約60ドルほどで推移しています。
ハードフォークのタイミングに合わせて現物のイーサリアムを買い、先物でETHPoWを売れば、価格変動を気にせず、ほぼノーリスクでイーサリアムPoWを得られることもできます。
一方で、バイナンスやFTX、OKXなどの大手取引所での取り扱いは決まっておらず、取り扱いは今後の状況を踏まえて決断するとリリースを出しています。
国内では、22日にbitFlyerが、マージに関する対応方針を発表。ETHPoWトークン現物での付与、取り扱い、または価値相当額の現金の交付を検討していることが分かりました。
イーサリアムPoWは最終的に無価値に
国内の複数の交換業者を経て、仮想通貨のファンドマネージャーを務めるS氏に今回の件について意見を求めたところ、ハードフォークで誕生するイーサリアムPoW にほぼ価値はないと考えているようです。
「そもそも、イーサリアムPoWについて気にしている多くは日本人。海外では注目度は大して高くありません。そのため、上場の瞬間に急落した後、小さな急騰を挟みながら最終的にはほぼ無価値になるだろう」と語りました。
一部の小さな取引所で取り扱われる可能性があるものの、そういった取引所は身分証明書の流出も多く、わざわざKYC(本人確認)して取引するほどの価値はないとのことです。
同じく、国内の交換業者ディーラーを経て個人投資家として活躍するN氏は、「まずはイーサリアムのアップデートが予定通り迎えることが重要。無事に通過すると、30万円台の可能性も高いのではないか」と上目線である見解を示しました。
昨年のイーサリアムのアップデートでは、日程が決まってから大きく上昇。ハードフォーク後に、バーンされるETHが多かったことから、35万円台から43万円までさらに上昇しました。
楽天ウォレットのシニアアナリスト松田康生氏によると『ビットコインの本格上昇は10月頃』と見込んでいることから、無事にイーサリアムのアップデートが通過すると、仮想通貨の冬が明けるのかもしれません。