毎朝、レポートを公開している楽天ウォレット、シニアアナリストの松田康生氏にお会いし、仮想通貨(暗号資産)相場は底を打ったのかどうか、様々な面から意見をもらいました。
前回は、仮想通貨相場は大底を打った可能性が高いとする要因をサイクル分析や難易度調整などを解説していただきました。
今回は、注目トピックスやFRBの金融政策面からの分析をお届けします。
仮想通貨相場の本格的な上昇は10月
仮想通貨の相場は、従来のパターンでいけば、6月が底だったとしても、そこから3~6カ月程度は低迷すると見込んでいます。
ビットコインの値動きアノマリーでも、7月は戻しても8月と9月は弱い傾向にあります。そうなると、本格的な反発は早くて10月、遅くなった場合は12月くらいになるのではないでしょうか。
今年の金融市場の最大の材料はインフレです。年末までに3回FOMCがあるため、仮に75%ずつ利上げすれば4.75%となり、足元のコアPCEデフレーターと並んできます。そうなればインフレ抑制効果が出てくるのか、それともインフレのコントロールが効かなくなるのか見通しが立つのではないかと思います。
いずれにしてもビットコイン相場にはプラスに働くと考えます。そうなると、年末の価格は360万円あたりでしょうか。
ただし、インフレが2ケタになりコントロールが効かなくなった場合は、2025年に到来すると予想している1200万円への到達が前倒しになるのかもしれません。
仮想通貨市場の注目トピックスなど
8月の仮想通貨相場は、サマーラリーで上昇しやすい株式相場とな逆となりやすい傾向にあります。また、市場の活性度合いでも株式相場とは逆となります。そのため、相場が閑散となれば「買いなし」となり、仮想通貨相場は売られやすい傾向にあります。
今年のジャクソンホール会議も金融政策に注目が集まっており興味深いところです。特に、ロシアとのエネルギー問題で高いインフレ率となり経済が厳しい状況にある欧州の対応が気になるところです。
また、11月の米国中間選挙以降の世界にも興味があります。
バイデン政権はトランプ前大統領の逆の政策を行おうとしてことごとく失敗した印象を受けています。バイデン大統領の民主党が負ければ、インフレやウクライナで動きがある可能性があるでしょう。
例えばいま政権が共和党に映ったとすれば、前政権のせいだすることで、金融引き締めを継続し、不況が進んだとしてもインフレを一掃することは比較的容易だと考えます。
FRBなどの金融政策が暗号資産市場へ与える影響
ビットコインは基本的にリスク資産です。しかし、法定通貨に対してのみ逃避資産として役割を果たすと考えています。
コロナ後の史上最大の財政策と史上最大の金融緩和によるインフレリスクのヘッジとして、ビットコインは買われました。
そして、テーパリングが開始してピークアウトし始めました。特に今回はFRBも市場もインフレを現実逃避するように過小評価した結果、後追いで利上げ幅を引き上げては、リスクオフでビットコインは売られてきました。
インフレが高くなってビットコインが売られている理由は、まだFRBへの信認が残っているからでしょう。これが崩れ始めると、ビットコインへの逃避需要が膨らむ可能性があります。
ビットコインチャート分析
テクニカル的には一目均衡の雲の中に入ったことに注目しています。
●ビットコイン日足チャート
出所:トレーディングビュー
これで少し雰囲気が変わりそうですし、しばらく雲の中でもみ合って、うまく上抜けることができれば本格的な反発もあり得ます。
今は、2019年2月の雰囲気に似ています。当時は、ほとんど動きのない相場でしたが、2月半ばから国内の仮想通貨規制の進展などがあり上昇。4月に入るとマイニング業界が活性化し、Bakktのビットコイン先物などで盛り上がりました。
これらを受けて、ビットコイン相場は30万円台から150万円まで駆け上がることとなったのです。