2023年6月15日、アメリカの大手資産運用会社であるブラックロックが、暗号資産の代表格として君臨するビットコインの現物価格と連動するETFの上場申請を行いました。アメリカの市場に上場するためにはアメリカ証券取引委員会の承認を得る必要がありますが、同委員会は先日暗号資産取引業大手のバイナンスやコインベースに対して提訴をしたばかりです。もとより暗号資産に対して冷ややかな対応をしてきた同委員会だけに、今後の動きはビットコインをはじめ暗号資産の地位に関わってくるのではないかと思います。
ビットコイン現物ETFの上場申請が持つ意味と、暗号資産のこれからを展望してみましょう。
ETFが上場して「一人前」?
これまでビットコインの先物価格と連動するETFはすでに上場していますが、現物と連動するETFの上場申請は初めてです。ETFとは上場投資信託のことで、何かの指数や価格と連動するように運用されている投資商品です。例えば日経平均株価やTOPIXといった株価指数と連動するETF、原油価格と連動するETFなどがあります。これまでは個人投資家が投資対象とするのが難しかったものも投資対象になるため、ETFが投資界隈に及ぼしている影響はとても大きいと思います。
すでにETFは世界中の投資家から高い評価を得ており、筆者も米国や日本の株価指数や高配当株などと連動するETFへの投資をしています。このようにすでに市民権を得ているETFだけに、これまで投資の世界からはキワモノ扱いされてきた暗号資産の現物価格と連動するETFが誕生することには、大きな意味があります。この記事作成時点ではまだ上場申請をしただけなので承認されるかどうかは分かりませんが、承認されて上場されると、ビットコインは伝統的な金融資産と同様の地位を得ることになります。
フィデリティもビットコイン現物ETFの上場申請
なお、ビットコインの現物価格と連動するETFの上場申請はブラックロックだけでなく、同じくアメリカの大手資産運用会社であるフィデリティも同様のETFを申請しています。
その他にはウィズダムツリーやヴァンエックといった資産運用会社も過去にビットコイン現物ETFを上場申請しましたが、いずれも否決された過去があります。しかし機は熟し、ビットコインの地位も高まってきたということで満を持して「王者」であるブラックロックが上場申請をしたのですから、今後の動向に注目が集まるのは当然と言えます。
暗号資産の過度な値動きへの抑止力となるか
これまでビットコインの現物ETFが上場されてこなかったのは、ビットコインをはじめとする暗号資産の価格変動の激しさにあります。ETFはそれぞれの金融資産の価格と連動するため、ビットコインの価格が乱高下するとETFの価格も乱高下します。さすがに他のETFと比べてあまりに激しい値動きは好ましくなく、投資界隈の不安定化にもつながる恐れがあります。
しかし時は流れて、ビットコインの価格にも一定の安定感が出てきました。このタイミングで行われる上場申請だけに、承認されるのではないかという観測もあります。
今後の暗号資産の地位に関わる大きな出来事だけに、承認か否決かの経緯を見守ることにしましょう。
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