中南米のエルサルバドルというと、世界で初めてビットコインを法定通貨にしたことで有名な国です。ビットコインを法定通貨にしたことを皮切りに「ビットコインシティ」を計画するなど、仮想通貨(暗号資産)シフトを鮮明しているエルサルバドル。

そもそも、なぜエルサルバドルは乱高下の激しい仮想通貨であるビットコインを法定通貨にしたのでしょうか。そして、実際に法定通貨にしたその後はどうなったのでしょうか。

意外に報道されていないエルサルバドルのその後について紹介します。

エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした背景

エルサルバドルは中南米の中でも貧しい国です。目立った産業があるわけではなく、世界から投資が集まってくるような理由もあまりありません。

実はエルサルバドルには、「コロン」という自国通貨があります。しかし、インフレの進行や経済の疲弊などからほとんど無価値になってしまい、同国内ですらほとんど流通していません。それに代わって米ドルが事実上の法定通貨として流通している国なので、コロンよりましだという考えからビットコインを法定通貨にしたことは容易に想像がつきます。

世界で初めて暗号資産を法定通貨にしたことで注目が集まりますし、ビットコインが今後経済システムの中で一定の地位を獲得すれば同国の経済的地位が高まる可能性もあります。自国通貨よりもましという少々寂しい理由によって、世界で初めてビットコインを法定通貨とする国家が誕生したのでした。

ビットコインを法定通貨にしてエルサルバドルはどうなった?

さて、エルサルバドルがビットコインを法定通貨としたあと、同国はどうなったのでしょうか。

2022年11月にはブケレ大統領がビットコインが流通する戦略都市「ビットコインシティ」を建設するとの構想を打ち出したのですが、現実は全く工事も進んでおらず構想のままです。現地にはただのジャングルが広がっているといいます。

この「ビットコインシティ」が実現すると、このシティ内ではビットコインのマイニング報酬に対する税金が免除され、ビットコイン決済で完結する経済システムを構築するとのことでした。しかし肝心のビットコインが暴落し、「ビットコインシティ」への関心も薄れてしまったことで計画は全く進んでおらず、実質的に立ち消え状態になっています。

エルサルバドルの冒険は「コケた」のか

ほとんど流通していない自国通貨「コロン」に代わって、米ドルが流通する国であるエルサルバドルが、話題性を狙う意味でビットコインを法定通貨としてことは、ある意味で同国でなければできなかった大胆な政策だと思います。

「ビットコインシティ」の計画が頓挫していることを考えると「コケた」と見るのが普通ですが、今後再びビットコインの価格が高騰すると同国が保有しているビットコインの価値も上昇し、計画を推進する力が得られるかもしれません。

国の命運が暗号資産の価格次第というのはあまりにも不安定だと言わざるを得ませんが、今後もエルサルバドルとビットコインの深い関係は続く可能性が高く、要注目です。