9月7日に、エルサルバドルでビットコインが法定通貨として利用できる法律が施法されます。
そこに向けて同国では着実に準備が進められており、8月30日には1億5000万ドル(約160億円)規模のビットコイン信託の設立を発表。さらには、公式専用ウォレット「Chivo」が9月7日からダウンロードできるようになるそうです。
Chivoの利用は強制ではないものの、アプリをダウンロードすると30ドル相当のビットコインが付与されるとなっており、このダウンロード数が、同国でビットコインがどれだけ普及するかを計る指標となりそうです。
これまでの流れを振り返ると、6月6日にアメリカで行われたビットコインのカンファレンスで、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領がビットコインを自国の法定通貨として取り扱うことを発表しました。そして、直後の6月9日に議会で可決。それを受けて相場は大きく上昇するなど、市場の期待が感じられました。
同時に交換業者の代表などの識者からは、ビットコインを法定通貨にすると既存の法律で矛盾や抜け穴ができ、仮想通貨の定義も変わってくるとの懸念も寄せられました。
フランシスコ・ガビディア大学が7月上旬に実施したアンケート調査(1233人の国民が対象)によると、54%がビットコイン法の導入は正しくないと回答し、賛成は20%に留まったそうです。
さらに、46%はビットコインについて「知らない」と回答し、65%が「決済をビットコインで受け付けたくない」と答えています。
その他のアンケートでも、引き続きドルを使い続けるとの回答が目立つ中、ビットコインとドルの両方を利用すると答えた割合が半数ほどいるなど、けしてネガティブばかりではない結果もありました。
ただ、事業者には反対の割合が多いようで、エルサルバドルの業界団体である国際貨物輸送協会はビットコイン法の施行に抗議するデモを行っています。
ビットコイン法の中身を見ると、ビットコインの決済を受け入れる必要があるものの、決済端末などを持たない場合はその限りではないとされています。そのため、実質BTC決済の導入の有無を選択できるようにも思えます。
なおインフラ面では、数百台規模のビットコインATMや、ATM以外に入出金できる場所を50カ所設置するとしており、議会での決定直後に導入が進む様子が報じられていました。
ただ、議会の決定からわずか3カ月で法定通貨とするために、国民へのビットコインに関する教育が進んでいないように思えます。
そもそもブケレ大統領によると、ビットコインを法定通貨にすることで投資を呼び込むことが狙いとしています。
また、同国の犯罪率は高く、銀行口座を持たない国民が7割もいるとされています。そのため、彼らの価値の保存と決済及び送金などの経済活動の活性化が期待されます。
●エルサルバドルの状況
人口:670万人
法定通貨:ドル
GDP:270億ドル(3兆円程度)
インフレ率:0~1%程度
そして、火山の地熱発電でマイニングを行うと発表されており、中国で規制されたマイナーが移動しているかどうかも気になるところです。
ビットコインの法定通貨とする旨を発表してから、エルサルバドルの知名度は爆発的に上昇し、Googleトレンドをみると、6月は前月対比5倍以上となっています。また、多数の仮想通貨(暗号資産)業界の代表が同国でのビジネスを検討する旨をコメントしていました。
少なくとも、現状ではプラスになっているような気がしますが、7日以降トラブルなく浸透するかどうかが焦点となりそうです。