6月6日に仮想通貨(暗号資産)業界で大きな話題が飛び出しました。米フロリダ州マイアミで行われたビットコインのカンファレンスで、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領がビットコインを自国の法定通貨として取り扱うことを発表したのです。
エルサルバドルは、中央アメリカにあるホンジュラスとグアテマラの間にある人口640万人ほどの国です。
以前は自国通貨としてコロンを使用していましたが、2001年1月にドルに変更しています。ビットコインを利用すると聞くと、ハイパーインフレの国をイメージする人も多いかと思いますが、同国のインフレ率は0から1%程度となっています。
主な目的として、国民の約7割は銀行口座を持っていないため、ビットコインを法定通貨にすることで携帯電話などで手軽に利用をできるようにしたいとのことです。昨年10月にペイパルが米国で仮想通貨の取り扱いを開始しており、年明けには世界中のユーザーが利用できるようになっています。国際送金を手掛けるストライプも、3月からエルサルバドルでの利用が始まっており、インフラ整備が進んでいます。
またブケレ大統領のツイートを見ると、ビットコインを法定通貨にすることにより、投資を呼び込みたいようです。 ビットコインの1%がエルサルバドルに投資されれば、GDPを25%押し上げるとツイートしています。
ただ、ビットコインの3分の1程度はほぼ不動となっていることから、1%がエルサルバドルに投資される可能性は割合として大きすぎると言えそうです。
まずは、銀行口座を持たない7割の国民の価値の保存と決済及び送金などの経済活動の活性化が期待されるというところでしょうか。
このニュースを受けてビットコイン相場への影響は限定的となっています。しかし、マイクロストラテジー社のCEOマイケル・セイラ―氏やトロンCEOのジャスティン・サン氏などあらゆる業界関係者がポジティブな意見を発信しています。
一方で、ビットフライヤー創業者である加納裕三氏や、クリプタクト代表であるアズムデ・アミン氏は、ビットコインを法定通貨にすると既存の法律で矛盾や抜け穴ができ、暗号資産の定義も変わってくる懸念を示しています。
これまで自国通貨が不安定な国での価値の保存や決済手段として利用されていたビットコインですが、法定通貨になることで暗号資産と外国為替の両方の定義を持つことになります。
これが今後の仮想通貨業界を大きく変動させる要因となることは間違いないでしょう。我々、投資家に近い面では、外国為替となることでFXの通貨ペアとなる可能性もあり得ます。また、エルサルバドルが成功すれば、他の国も法定通貨として採用してくるかもしれません。
今年のメインテーマは、コインベースの上場に、テスラなどの企業によるビットコインの購入、そしてビットコインETFの米国採用となっていました。コインベースの上場を終えて、残すところビットコインETFの採用が大きな相場変動要因でしたが、突如としてここに法定通貨としての組み入れが入ったといえます。
多くの業界関係者にとってサプライズとなったこのニュースですが、法律面や国際決済機関の対応などが不透明な部分が多いことは間違いありません。新たなうねりへの期待の高まりとともに、波乱の道のりが幕を開けたと言えるかもしれません。