ようやくやってきたキャッシュレス化の波。契機となったのは2018年末、PayPay株式会社による100億円還元キャンペーンでした。
このキャンペーンは、PayPayのアプリを使いキャッシュレス決済すると、最大で利用金額の20%が還元されるというもの。破格の還元率が反響を呼び、ニュースでも大きく取り上げられました。
それまでは広く浸透しているとは言えなかった日本のキャッシュレス決済ですが、その後はいたるところで耳にするようになり、最近では乱立するキャッシュレス決済への揶揄も目にするほどです。
「財布を持たずに買い物できるから便利」「どこでもキャッシュレス決済できるようになればいいのに」キャッシュレス決済に寛容な人たちは、このように話します。しかしキャッシュレス決済の浸透には考えておきたいことも。それが『個人の少額寄付』についてです。
コンビニエンスストアのレジ横に必ずある募金箱
現代に生きる人がもっとも多く利用する店舗であろう、コンビニエンスストア。ふとレジ横に目をやると、そこには必ずと言っていいほど募金箱があります。普段の買い物ではあまり意識しないレジ横の募金箱。年間でいったいどれくらいの金額が集まると思いますか?
コンビニの募金箱に集まる金額は概算で年間3億円以上
コンビニエンスストア大手のローソンによると、募金箱が設置された1992年からの約25年間で集まった総額は、なんと86億円にものぼるそうです。単純計算で年間3億円以上が集まっている計算に。ぼくは高校生の頃、コンビニでアルバイトをしていたのですが、硬貨のお釣りを募金箱に入れる人が、想像以上に多かったことをいまでも覚えています。
キャッシュレス決済の浸透はわたしたちに利便性を与える一方で、人々が募金する機会を確実に奪っている側面があります。ローソンだけでも年間3億円。(もちろん全額がお釣りに由来するものだけとは限りませんが)
まだ日本はキャッシュレス元年とも言えるタイミングですから、実際にどれくらいの影響があるかは数字としてわかっていません。しかし、このことを考慮せずにキャッシュレス決済の浸透を喜んでよいのでしょうか。
キャッシュレス時代の『寄付』。ブロックチェーンはチャリティーの未来を変えられるか
いま、ブロックチェーンをチャリティーの分野に活かしていこうとする動きがあります。仮想通貨の根幹技術として市民権を得ていたブロックチェーン。関わる全員で台帳を管理していくその技術には、注目すべき耐改ざん性と透明性があります。
中国・Ant Financialのブロックチェーン×チャリティーの事例
中国のキャッシュレス決済サービス「アリペイ」を提供するAnt Financialは、チャリティー組織である中華社会救助基金と協力し、ブロックチェーン上でチャリティー活動をおこないました。実際にこの活動では、10人の聴覚障害児に19.84元が寄付されています。
中国における寄付の文化は、これまで疑問と不信感を抱かれていました。出処が不明、横領、使いみちが有用性に欠ける、などその理由はさまざまです。これらに共通するのは『透明性』というキーワード。そこでブロックチェーンが注目が集まりました。
ブロックチェーンを使えば、寄付金の流れをリアルタイムに追うことができます。「いつ、誰が、いくら寄付したのか」「誰にどうやって使われたのか」Ant Financialが取り組んだブロックチェーン×チャリティーの仕組みでは、これらすべてが確認可能。ブロックチェーンによって担保された信用は、寄付の市場を活発にしていくでしょう。
また、もともとブロックチェーンの技術が使われていた仮想通貨には、決済速度や手数料の面でフィアットより有利な面があります。そのため、マイクロペイメント(少額決済)による寄付においても効果を発揮していくでしょう。まだまだ実用レベルではありませんが、このAnt Financialによる取り組みは、大きな可能性を秘めていると考えられています。
IBMが開催したチャリティーコンテスト
米IBMは、貧困の撲滅を掲げるNGO団体Global Citizenと提携し、チャリティーコンテストを実施すると発表しました。これは、慈善事業で受け取った寄付が活用されるまでの経緯を追跡するコンテストで、寄付の透明性を担保できるブロックチェーンプラットフォームの構築を目指すもの。
この取り組みからは、世界的な企業であるIBMもブロックチェーン×チャリティーの分野に可能性を感じていることがわかります。
IBMはこのほかにも、さまざまな分野とブロックチェーンをかけ合わせる取り組みを続けています。
キャッシュレスの時代に縮小する可能性がある寄付の市場。このような可能性を考え、広く周知していくことで、これまでと同じ水準で寄付の仕組みが機能する社会に変えていけるのではないでしょうか。
もちろん、キャッシュレス決済アプリにも寄付の機能が実装されつつあります。しかしこれらでは寄付したお金の流れを追うことができません。
キャッシュレスが浸透した社会で、どのように寄付の文化を成り立たせていくのか。キャッシュレス先進国である中国の、キャッシュレス決済サービスを提供する会社Ant Financialが、ブロックチェーン×チャリティーの分野に力を入れています。キャッシュレス化が進むいまだからこそ、このことにメッセージを感じていかなければならないのかもしれません。
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