◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.7 −米中冷戦の行方と日本の未来』(3月29日発売)の特集「フィスコ仮想通貨取引所の今後」の一部である。全4回に分けて配信する。
2018年11月22日、フィスコのグループ企業であるフィスコ仮想通貨取引所は、テックビューロ社が運営していた仮想通貨取引所Zaifの事業を譲り受けた。今後、フィスコ仮想通貨取引所(以下、FCCE)はどのように将来を見据え、進化していくのだろうか。フィスコデジタルアセットグループ(以下、FDAG)代表取締役、兼カイカ取締役会長の八木隆二氏に話を伺った。
■仮想通貨のマーケットは「期待形成フェーズ」から「過渡期フェーズ」へ
2017年年末から2018年年始にかけて、仮想通貨のマーケットは非常に活況を呈していた。これは、ブロックチェーンや仮想通貨の登場により、これまで中央集権型だった社会が今後は分散型の社会になるということに対して、投資家の期待が高まったことが一番の要因だと考えている。
そのため、フィスコデジタルアセットグループでは、2017年の1年間を「期待形成フェーズ」と位置づけている。同フェーズにおける盛況の具体的な要因は、ビットコインなどの仮想通貨への投資、ICOトークン(仮想通貨による資金調達で発行されるトークン)への投資・投機である。仮想通貨の投資という意味では、一部のアーリーアダプターの存在によってマーケットがつくられていったとも言えるだろう。
その後2018年、ビットコイン先物が登場するに伴って機関投資家の参入が活発化した。その結果、盛況で行き過ぎた価格が機関投資家の売りで崩れ、市場全般の価格が低迷した。さらに、特に日本においては、2018年1月、取引所コインチェックから仮想通貨NEMが流出した事件をはじめとするハッキング事件や不祥事が相次ぎ、仮想通貨を中央集権的に管理する取引所への信頼が失われた。
仮想通貨やブロックチェーンが将来、分散化のインフラを形成するに至るまでは、まだまだ道のりが長いだろう。今後は、ブロックチェーンや仮想通貨を利用したマーケットの過渡期を迎えると考えている。我々はこのフェーズを「過渡期フェーズ」と称している。ただし、分散型社会が完全に成立するまでには、依然として取引所を中心とした中央集権的な管理が重要視されることは間違いない。仮想通貨の中央集権的な管理は、取引所が担っていく社会的責任の一番大きな部分であると考えている。
■最も重要なのは、利用者保護とマネーロンダリング防止
最も重要なのは、利用者保護とマネーロンダリング(仮想通貨の資金洗浄)防止の2つである。これは分散型の考え方ではなく、中央集権的な考え方であり、取引所が取引所における責任をしっかり果たすことに言い換えられる。
まず「利用者保護」については、Zaifにはハッキング事件があったため、今後、Zaif利用者への対応やその保護に関して余念なく対応していきたいと考えている。既存の顧客に対して適切な対応をすることによって、Zaifの信頼を取り戻し、その信頼を確立することでますます多くのお客様に利用していただけるように精進したい。今後はZaifを含んだFCCEを大きく成長させるとともに、日本の仮想通貨業界に貢献していきたいと考えている。
次に、「マネーロンダリング」についてお話しすると、日本では、金融活動作業部会(FATF)による第4次対日相互審査を2019年に控えており、金融庁がマネーロンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)を重要課題として体制整備や監視強化を進めている。これについて、弊社としても協力して対応していく社会的義務があると考えている。
特に2019年は、日本がG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)の議長国となることを鑑みても、日本が抱える責任は重大であり、仮想通貨業界がマネロンの温床になるようなことが絶対にあってはならない。今回Zaifの事業譲渡を受けたFCCEとしても、大手仮想通貨取引所の一角を占めるにあたって、その社会的責任を痛感している。
まずしなければならないことは利用者保護、マネーロンダリング防止の2つであるということ。これを大前提にして、FCCEの次なる戦略へ進めると考えている。
■顧客の資産を守り、外部機関との連携を図る
利用者保護という観点で言うと、お客様から預かった資産をきちんと守ることがとにかく一番大切である。そのため、ウォレットの管理、ネットワークセキュリティ、システムインフラを強固にすることだ。そして、もう一つ大事なことは運用である。セキュリティが守られたソフトウェア、ハードウェアがあったとしても、中央集権的に管理し運用しなければならない。管理のルールと運用を厳格に守っていくこと、これがセットになって初めてお客様の資産を守ることになる。
利用者保護では、仮想通貨取引所がきちんと対応していれば完結する話だが、マネロンではそうはいかない。マネロンは1社で対応できるものではなく、外部と協力する必要がでてくる。危険な送金先というのは既にデータベースとして外部に存在しているため、外部との連携において注意して対応していかなければならない。
例えば、外部でマネロンの事例が出たら、その対応をすぐに自社に反映する、また、自社でマネロンが発生したら、それを外部に対して情報提供し、外部の機関と連携するという姿勢をとること、これが重要である。外部との連携という意味においては、金融庁が進めているAMLの国際的な基準に即した対応をしていきたい。
(つづく~「フィスコ仮想通貨取引所の今後 vol.2 ~FDAG代表取締役 八木隆二氏インタビュー~【フィスコ 株・企業報】~)
【八木隆二 Profile】
2010年フィスコ入社。ネクス取締役(現ネクスグループ)、ジェネラルソリューションズ(現フィスコIR)取締役などを経て、2015年カイカ代表取締役会長に就任。2018年12月よりカイカ取締役会長と なる。現在、フィスコデジタルアセットグループ代表取締役を兼任。
<HH>