安全かつ改ざん困難な形でデータを管理・共有するための手段として、ブロックチェーンが様々な業界で注目されています。例えば、ヘルスケア分野におけるブロックチェーン市場は、2025年までに16億ドル(約1720億円)にまで成長すると予測されています。
今回紹介する「MediLedger」(メディレジャー)は、医薬品業界の課題を解決へと導く可能性を秘めた注目度の高いプロジェクトです。
本記事では、医薬品業界が抱える課題を整理した上で、MediLedgerの可能性を解説していきます。
MediLedgerの概要と医薬品業界の課題
MediLedgerは製薬会社向けのソリューション
MediLedgerとは、ブロックチェーンによって厳格で効率的な医薬品サプライチェーン管理の実現を目指すプロジェクトです。サプライチェーンとは、生産や流通を経て消費者の手に届くまでのプロセスのことを指しています。
MediLedgerは許可されたメンバーのみがデータベースへの書き込み権限を持つコンソーシアム型のブロックチェーンであり、製薬会社や医薬品の卸業者、小売業者などで構成されています。
また、MediLedgerの開発を主導するブロックチェーン企業「Chronicled」(クロニクルド)は、2019年9月時点で合計2,800万ドル(約30億円)の資金調達に成功しており、投資家からも一定の評価を得ていると言えるでしょう。
医薬品業界の課題とは?
世界にはびこる偽造医薬品の問題
日本にいるとあまり実感がないかもしれませんが、世界では偽造医薬品の問題が深刻化しています。2014年6月に発表されたレポート「The Health and Economic Effects of Counterfeit Drugs」によれば、偽造医薬品は毎年10万人以上の死者を出し、製薬会社に約180億ドル(約1.9兆円)もの損害を与えているのです。
アメリカでは薬物乱用が深刻化
問題は課題は偽造医薬品だけに留まりません。例えば、アメリカでは麻薬性鎮痛薬オピオイドの依存症問題が深刻化しています。
オピオイドはもともと、麻薬性が無いとされており、アメリカ国内で広く普及していた医薬品でした。しかし、次第に依存性があることが明らかになり、今ではオピオイドの乱用による死亡者の割合が薬物乱用によって死亡した人の60%を超えています。
各国で偽造医薬品の撲滅に向けたルールづくりが進む
このような背景をもとに、医薬品のサプライチェーン管理が世界的に進んでいます(2019年9月現在)。
一例としては、前述のオピオイド問題を受け、アメリカでは個々の医薬品が製造されてから消費者に届くまでのサプライチェーンを厳格に追跡できる体制を整えるように、製薬会社などに求めるルールが制定されました。
既存のサプライチェーンの課題はグローバル化とサイロ化
医薬品のサプライチェーンはグローバル化しているため、詳細に医薬品を追跡するシステムの構築が容易ではありません。
さらに、既存の医薬品サプライチェーン管理システムは個別の企業や一部のコンソーシアムでサイロ化しており、個別のシステムを継ぎはぎするだけでは、厳格かつ効率的に医薬品の来歴を管理するのが困難です。
なお、サイロ化とは、システムやビジネスプロセスなどが組織内などで完結し、外部との連携を持たずに孤立している状態のことを意味しています。
以上のような課題をブロックチェーンベースのMediLedgerは解決できる可能性があり、それゆえに注目されているのです。
MediLedgerというブロックチェーンを使う意義とは?
MediLedgerというブロックチェーンプロジェクトは一体なぜ、医薬品業界の課題を解決し得ると期待されているのでしょうか?
医薬品の来歴管理にブロックチェーンを使う意義とは?
医薬品のサプライチェーンにブロックチェーンを導入する意義は何なのでしょうか?
まず、ブロックチェーンを活用することで、参加者(企業など)が等しい立場で、単一の参加者に権限が集中することのない共同運営されるシステムを構築可能です。
また、システムの仕様によりますが、基本的にブロックチェーンでは参加者全体の合意が無い限り、データを書き換えることができません。少数の参加者の独断でデータが改ざんされるリスクを排除できるのです。さらに、書き込まれた情報は許可された参加者であれば、誰でも検証できます。
つまり、ブロックチェーンを活用することで、公平かつデータに信頼性と透明性のあるグローバルなシステムが実現するのです。
製薬大手と小売大手がMediLedgerに参画
もちろん、コンソーシアムを組んでサプライチェーンを管理する仕組みの場合、大手企業の参加が不可欠です。
MediLedgerに関しては、「大手企業と連携する」という部分は順調に進んでいると言えるでしょう。世界的な製薬企業であるファイザーやジェネンテック、ギリアドサイエンシズ、アメリソース・バーゲン、マクケッソンが既にネットワークに参画しており、さらには大手小売業者のウォルマートも加盟しています。
MediLedger2019年に商用サービスが本格的に始まったばかりであり、本当にこのプロジェクトが医薬品業界の課題を解決するかはもう少し先にならないと分かりません。
とはいえ、既にアメリカの製薬大手が参画していることからも、注目すべきプロジェクトであることには変わりないでしょう。
まとめ:サプライチェーン管理というユースケースには要注目
MediLedgerを開発するクロニクルド社は、現時点では医薬品のサプライチェーン管理システムの構築に注力していますが、将来的に鉱物やアパレル業界のサプライチェーン効率化も視野に入れています。
MediLedgerのようにサプライチェーン管理にブロックチェーンを導入する事例は世界的に増えており、普及が進んでいくでしょう。
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