世界最大規模のマイニング企業であるビットメイン(Bitmain)は、新たなマイニングマシンの販売を発表しました。
・Antminer S17 Pro
・Antminer S17
・Antminer T17
同社によると、これまでのS15シリーズよりも発電効率が良く、処理能力が何倍も高くなったとコメントしています。これは、現在の最高性能のマイニングマシンを上回る毎秒50兆ハッシュ(TH / s)以上のハッシュレートを持つそうです。
また、17シリーズに搭載された新しいチップは、同社の前シリーズのチップであるBM1391と比較して、電力効率が28.6%も向上しているといいます。これにより、マイニングの大幅なコスト削減でビットメインの利益に大きくつながると、プロダクトマネージャーであるヤンシン氏がコメントしています。
仮想通貨の市況悪化の影響もあり、香港でのIPOを断念したビットメインですが、直近のマーケット環境の好転と新たなマシンの販売により、再度IPOを行うための土台づくりができていると言えそうです。
夏に向けて80億円超分の設備投資
3月21日にビットメインは、今夏に中国で予想される電力コストの低下を見越して、マイニング事業を拡大していく計画を立ち上げているとCoindeskが報じました。
記事によると、同社は夏季に水力発電によって電力コストが下がるのを利用し、同地域に約20万台の自社マイニング製品を配備する予定であり、金額にすると80億円以上にもなるとされています。
過去3年間、ビットコイン価格は3月~7月において上昇していることも、中国の水力発電によるマイニングの影響があるのかもしれません。
ビットコインのマイニング難易度は変わらず
4月に入ってからビットコインの価格が上昇したことにより、マイニング難易度(Difficulty)にも変化がありそうです。
しかし、4月7日に行われた難易度調整では変化率はわずか+0.22%となっていました。
出所:BTC.com
前回の3/24と比較してビットコインの価格は10万円ほど違うにもかかわらず、これは驚きの結果です。
平均ハッシュレートも変わっていないので、マイナーは価格上昇率がビットコインと比べて大きかったビットコインキャッシュのマイニングを行ったと思われます。
ビットコインとビットコインキャッシュのハッシュレートの関係性を見ることができるfork.lolでは、相場が盛り上がって以降にビットコインキャッシュの比率が上昇していることが分かります。
出所:fork.lol
一般的にマイニング効率の良いマシンの登場は、マイニングコストの下落につながります。これはマイナーの売り需要が増加するために、ビットコインの価格下落要因となります。
しかし、今回のようにビットコインキャッシュなどのアルトコインにハッシュレートが分散したり、市場参加者が増えることで価格下落は発生しづらく、需給バランスが保たれます。
つい先日、中国ではマイニング禁止を検討するという報道がされました。
これは短期的には市場心理の悪化により相場に悪影響を与える可能性が高いですが、中期的にはマイニングコストの上昇により、相場にプラスとなる可能性があります。
①ハッシュレートの下落と市場心理の冷え込みで価格が下落
②マイニング原価の上昇で、マイニングコストが上昇
③マイニング難易度の下落により、マイナーの参入障壁が下落
④多くのマイナーが参入しハッシュレートが上昇
⑤ハッシュレートの上昇により買い需要が増え価格が上昇
事実、報道がされてから相場は2%程度の下落となりましたが、昨晩ビットコインが一時60万円を付けたことにより、報道による下落幅を帳消ししました。
いずれにせよ、デジタルゴールドと呼ばれるビットコインのマイニングコストは、金の採掘コスト同様に価格の重要な参考値となっています。
重要イベントとしては、次のビットコインのマイニング難易度調整である日本時間の4月21日午前5時ごろ。
そして、中国のマイニング禁止報道におけるパブリックコメントの募集期限である5月7日以降。
今回ビットメイン社が発売したマイニングマシンは数時間で完売したとの噂もあり、全体的なハッシュレートの向上に寄与し価格上昇の後押しとなることを期待したいですね。