<解説及び着目点>
★週間マーケット概況★
2022年1月第3週(1/15~1/21)の暗号資産売買マーケットは、全体的に下値模索が続いていましたが、週末にかけ時価総額トップのビットコイン(ティッカー:BTC)が直近安値を更新する展開となっています。アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)の代表格であるイーサリアム(ティッカー:ETH)も、同じく大きな調整を強いられています。
暗号資産全般的に商いを伴った下落となっていますが、投げ売り(ロスカット)の色彩は薄く、今回の調整が長引くことを示唆しているかもしれません。金利先高感、インフレ懸念により株式市場が調整色を強めていることからも、暗号資産マーケット含めてリスクオフに大きくシフトしていると思われます。
JDR.株式会社で算出しているJDR.Index(ジェーディーアールインデックス)は暗号資産マーケット全体を適切に観察できる指標です。同指標の1月第3週のパフォーマンスは-8.4%の下落、ビットコイン単独では-6.4%の下落、インデックスを構成する暗号資産全てが下落する展開となりました。
JDR.株式会社が個別で格付け(レーティング)している暗号資産(全32銘柄)では、コスモス(同:ATOM/騰落率+4.0%)がわずかに上昇したほかは、ほとんどの銘柄が下落、特にサンドボックス(同:SAND/-20.8%)やポルカドット(同:DOT/-16.7%)が大きく下落しました。
★クリプトフォーカス★ ~暗号資産マーケット指標とは?~
暗号資産取引市場は、株式市場と異なり、同じ暗号資産(例えばビットコイン)を取引する際、世界各国に存在する取引所によって売買価格が異なる事が特徴のひとつです。
対して、株式は、日本企業は日本市場、アメリカ企業はNY市場という様に、各国に存在するそれぞれの株式市場で取引されており価格はひとつ、いわゆる一物一価が大多数です。ただ、複数の市場に上場している銘柄、ADR(米国預託証券)といった在外株式を自国で売買できる仕組みも存在しています。そこで複数の売買価格が形成されることもありますが、裁定取引(同じ銘柄で、安い価格のものを買い、高い価格のものを売って、後に相殺することで、その価格差を収益とする取引)により、瞬時に価格は収れんされます。
暗号資産の場合、各国取引所間での送金時間、送金コストなどの条件が異なる為、裁定コストと期待収益が見合わないケースがあり、裁定機会が見た目ほど多くはありません。
投資家は各国(取引所)毎に売買注文、取引する形となりますが、価格が大きくばらつく上、価格変動にも偏りがあります。従って、利用する取引所での売買価格が、グローバルで取引されている売買価格と同等なのか(安いのか、高いのか)瞬時に判断することが難しいことが多いです。
実際、2021年の年末間際に、ビットコイン価格が大きく急落した日本の取引所が1か所だけありました。
下記グラフを参照してください。
これは日本の取引所大手及び海外取引所大手のビットコイン売買価格、そしてJDR.株式会社が配信しているビットコイン価格(独自ロジックにより算出)の年末年始の1時間足です。
12月31日の23:55~23:58の間に約10%の下落(約550万円から500万円まで急落)が見られ、この取引所で売買している投資家はかなり動揺したはずです。背景には、その時間に大口の売り注文があった模様ですが、新年を迎える頃には、元の550万円まで戻っています。これに対して、世界の取引所大手の価格はなんの変動もなく、またJDR.で配信している価格も変調はありません。これは大きな悪材料が出たのではなく、一部取引所での変動があったことを示しています。
今回はたまたま日本の取引所ですが、海外の取引所でも起こり得る事象で、どこで起こるかわかりません。突発的に大きな悪材料が発生したならば、多くの取引所が同様の振る舞いをするはず(図参照)ですが、投資家がその判断をするには、複数の取引所を監視するしかありません。
ひとつの取引所だけ急落しているビットコイン
通常の価格の挙動
そもそも世界全体における日本取引所全体の暗号資産売買シェアは年間でも5%程度、直近では更に低下しており、グローバルな価格を形成するだけの規模になっていないことに起因しています。相場が瞬間的(秒単位)に急落する、いわゆる「フラッシュクラッシュ」とも異なります。仮にフラッシュクラッシュを狙った売買だとしても、その急落する動きがそうでないかは平均算出価格を見れば明らかです。
ビットコインだけでもこうした要因がある以上、他のアルトコインも同様のことが起こる可能性は否定できず、各暗号資産の適正価格及びベンチマークとなる指標が求められています。
分析の続きはこちら(~平均価格、インデックスが存在する意味、主な暗号資産インデックスは?~) から
暗号資産マーケットに関連する主要な出来事及び相場回顧、翌週の注目点をピックアップします。(対象期間:前週金曜午後~金曜日午前)
1月15日(土)~1月17日(月)
👉香港、ステーブルコインの規制導入に向けた議論を開始
👉ウルグアイ、初のビットコインATM設置
👉リオデジャネイロ市、市の資産の一部をビットコインに割り当てる方針
👉イーサルアム上のUSDCの発行量がテザーを超える
👉取引所大手ビットフィネックス、カナダ(オンタリオ州)から撤退
👉暗号資産保有の米国人のうち70%は21年に投資開始
👉トンガ、ビットコイン法定通貨化の議論浮上へ
1月18日(火)
👉イーサリアムの週間バーン数11万ETH超える
👉米議会、ビットコイン採掘に関する公聴会開催
👉米OCC(通貨監督庁)長官代理、ステーブルコインに銀行規制の適用を提案
👉インド首相、「暗号資産課題対処に世界共通の取り組み必要」
👉シンガポール中銀、暗号資産取引の宣伝を規制
👉世界のNFT取引額、1月過去最高(16日まで)
👉バイナンス、タイにデジタル資産取引所を設立
1月19日(水)
👉米コインベースNFT電子市場、マスターカードと提携
👉暗号資産取引所最大手バイナンスがタイ市場参入
👉マイケル・ジョーダン、ソラナ(SOL)のNFTインフラ「メタプレックス」に約53億円出資
👉暗号資産取引所のビットメックスがドイツの老舗銀行を買収
1月20日(木)
👉米グーグル、仮想通貨利用が可能なデジタルカード提供
👉約300の米中小銀行、上半期にビットコイン取引提供へ
👉米グレースケール、ブルームバーグと提携で仮想通貨関連指数をローンチ
👉新ステーブルコイン「USDF」、初の銀行間送金に成功
👉シンガポールの仮想通貨ATM、中央銀行の取り締まりで閉鎖
1月21日(金)
👉FRB、「デジタルドル」で初の報告書 利害を意見公募へ
👉米SEC、スカイブリッジのビットコイン「現物」ETF申請を非承認
👉イラン、中央銀行デジタル通貨の試験を間もなく開始
👉コインハイブ事件、最高裁で無罪判決
👉ロシア中銀、暗号通貨の包括的な禁止を提案
👉ニューヨーク市長、ビットコインとイーサリアムで初めて給与受け取り
<ディスクレーマー>
本資料は、暗号資産の参考となる情報提供のみを目的としたものです。投資に関してはご自身の判断でなさいますようにお願い申し上げます。本資料は、筆者が各種メディア報道、事業会社アナウンス、要人発言などより抜粋し、作成しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
また、本資料に記載された意見や見通し等は、今後、予告なしに変更されることがあります。