当コラムでは「暗号資産」と表記していますが、暗号資産には「仮想通貨」との呼び名もあります。どちらの同じものを指しているわけですが、日本では「仮想通貨」の呼び方が定着しているように感じます。
実はこの両者には似て非なる意味合いの違いがあります。それぞれの言葉に含まれている意味合いの違いと、これからの正しい位置づけについて語りたいと思います。
「仮想通貨」と「暗号資産」の違い
仮想通貨というのは、おそらく日本独自の呼称です。それに対して暗号資産というのは英語の「Crypto Asset(暗号資産)」という言葉に由来しているため、世界的な標準に近いといえます。それではなぜ仮想通貨と呼ばれるようになったのでしょうか。そこにもやはり最初に名前がついた英語名に由来があります。
ビットコインやイーサリアムといった暗号資産の総称を、英語では「Cryptocurrency(暗号通貨)」といいます。暗号化したデータをブロックチェーン上で管理することが暗号資産の本質なので、暗号化は根幹にも関わる技術です。そのため「暗号(Crypto)」という言葉が用いられているわけですが、日本ではそういった構造よりも「新しい通貨」という用途が強調され、それが仮想空間で流通していることから仮想通貨と呼ばれるようになったといわれています。
実は、すでに国は呼称を統一しています。最初は仮想通貨が主に用いられていたのですが、2019年からは暗号資産で統一されています。
実際の位置づけは、すでに「暗号資産」?
暗号資産は国際間や遠隔地などの決済をスムーズかつ低コストで実現できることが最大の売りです。ビットコインも決済手段として登場した「通貨」なので、日本でも仮想通貨の雄として認知されています。
しかし、実際はどうでしょうか。ビットコイン決済で買い物をすることは稀で、当コラムをお読みになっている方の中で、ビットコインなどの暗号資産を買い物の決済に使ったという方はいるでしょうか。筆者は未経験ですし、きわめて少数派ではないかと思います。
それよりも、例えばビットコインの価格上昇で大きな利益を上げた人がいるように、暗号資産は決済手段よりも「お金を生む仕組み」としての機能がメインになっています。決済手段としての「通貨」よりも、お金を増やすための「資産」というわけです。今後は通貨としての地位がより高まっていくかもしれませんが、主要な暗号資産の資産性が損なわれることはなさそうなので、引き続き暗号資産のほうが実態に即しているといえます。
自民党の推進議連は、暗号資産の再定義を提案
国が暗号資産の名称で統一しているものの、いまだに暗号資産は投資商品としては特殊な存在です。株やFXなどを取り扱っているのは証券会社やFX専業の取引会社で、これらは同じ法制度のもとで運営されています。
これに対して暗号資産取引所は法的に別の扱いになっており、このことだけを見ても特殊な扱いを受けていることが分かります。しかも前項で述べたように暗号資産はすでに資産(アセット)としての機能を高めており、資産保有のポートフォリオの一部に組み込む投資家も多くなっています。
現法制下では、暗号資産だけが雑所得扱いになり、利益は総合課税です。これに対して株やFXによる利益は分離課税で、税率も20.315%で一律です。自民党の議連はこうした特殊な扱いを改めることから暗号資産の資産性を認め、日本人の資産形成に役立てるべきであると提案しています。単なる言葉の違いと言うなかれ、言葉の違いだけでなくこれだけ意味合いの違いがあるのです。
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