2020年9月8日にコインチェック(Coincheck)で取り扱いが開始されたということで話題となったIOST。
格闘家兼YouTuberの朝倉未来さんがこれを保有して口座資産が1億円を突破したということで、多くの人々に知られることとなりました。
しかし、このIOSTとは一体どのような仮想通貨(暗号資産)なのでしょうか?
IOSTをしっかりと理解しようとすると、NFTやコンセンサスアルゴリズムなどの専門用語が多く、投資を始めたばかりの初心者の方には理解し難い内容も多いと思います。
ですので、そんな方々にでも理解していただけるように、IOSTの特徴を分かりやすく簡単に説明します。
<IOST公式チャンネルによるIOSTの説明動画>
<Coincheckの公式チャンネルによるIOSTの説明動画>
IOSTの概要
IOSTは、我々が日常生活でクレジットカードを利用するのと同じようにブロックチェーンが利用される未来を作っていこうとしています。
「ブロックチェーンが生活の一部になる」ことを目標としているので、そのためのインフラになれるように貧富の差の影響ができるだけ小さくなるようにしたり、他のサービスやアプリに応用しやすいように設計したりしてあります。
<IOSTの基本情報 ※左右にスクロールできます>
特徴 | オープンソースプロジェクトであるIOSTは、将来のオンラインサービスのアーキテクチャーとして機能するブロックチェーンインフラストラクチャを提供することにより、分散型経済のセキュリティーとスケーラビリティのニーズを満たすことを目的としています。 JavaScriptを用いてDappsの開発が行えることも、特徴のひとつ。IOSTトークンバランス、レピュテーションベースのトークンバランス、ネットワークへの貢献、ユーザーの行動などの要因を利用して、ネットワーク上のトランザクションのセキュリティーと効率を保証するための「Proof of Believability」と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを開発しました。 | ||
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時価総額 | 約1130億円 | 発行上限 | 22,073,476,485 |
承認方式 | Proof of Believability(PoB) | 上場時期 | 2018年01月15日 |
中央機関 | なし | 提唱者 | Terrence Wang Jimmy Zhong Ray Xiao |
オフィシャルサイトURL | https://iost.io/ | ||
ホワイトペーパーURL | https://iost.io/624/ | ||
公式ツイッターURL | https://twitter.com/iostoken |
IOSTは処理速度を高め、DApps開発もしやすいように工夫されたオープンソースプロジェクトで、「Interset of Service Token」のイニシャリズムです。
DAppsというのはDecentralized Applicationsの略で、ブロックチェーンを使って管理・アップデートの合意・トークン発行が自動で行われる、オープンソースのサービスやゲームアプリを指します。
<DAppsである要素>
- オープンソースかつブロックチェーンを使っている
- アプリの中央管理者がいない
- トークン発行と、それの授受で自動でオペレーションが行われる
- アップデートの際にはユーザーが合意形成する
IOSTの価格は、2021年5月10日時点で以下のように推移しています。(みんかぶ暗号資産 IOST/JPY リアルタイムチャート)
IOSTの強み
概要だけみても全く分からない部分が多いと思いますので、これから「IOSTのここが凄い!」という特徴を紹介します。
独自のコンセンサス・アルゴリズム
ビットコインとイーサリアムは現在、PoW(Proof of Work)という、マイニングをしてもらうことによって取引データを承認してもらうコンセンサス・アルゴリズムを採用しています。
しかしこれでは、取引が急増したりすると承認が追い付かずにパンクしてしまうなどの問題が起きてしまうわけです。
そうなると、利用者は取引をより早く承認してもらうために手数料を上乗せします。すると手数料価格の高騰に繋がり、イーサリアムをベースにしたものが多いDeFi(分散型金融)サービスでの手数料問題が起こってしまいます。
<ミニコラム: イーサリアムベースのDeFiが抱えるGAS(手数料)問題>
手数料問題とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
DeFi(分散型金融)の文脈で必ず話題にのぼりますが、DeFiをやっていない人からすると「送金手数料とはまた違うの?」など、色々な疑問が浮かぶと思います。
詳しくお話しすると難しくなってしまいますので、今回は“これだけは知っておいて欲しい”という基礎知識と、どのような問題なのかを簡単に解説します。
まず、GAS(ガス)と呼ばれるものを知る必要があります。ガスとは、ユーザーが送金をマイナーに認めてもらうために支払う手数料です。ガスの単位は“Gwei”で、「1gwei=0.000000001ETH」となっています。このGweiを使って提示されるものがGas Priceで、ユーザーそれぞれがGas Limitを設定できる(Gas Limitはイーサリアム側から上限が定められているのでその範囲内で)ようになっています。
少し難しいですよね。ガスは取引に必要なガソリン、Gas Priceはガソリンの値段、Gas Limitはガソリンの量だと思ってください。
Gas代の算出方法は次の通りです。
「ガス代=Gas Price (〇〇Gwei)× Gas Limit」
しかしユーザーがpriceを自由に設定できるようになっているため、すぐに承認してもらいたい人は、優先して処理してもらうためにより高いガス代を設定するようになります。
イーサリアムはPoWというアルゴリズムを採用しているため、報酬が高い方にマイナーが飛びつくようになり、価格競争となるわけです。
このGASという仕組みのおかげで、Dos攻撃(=わざと大量の処理を要求してサーバーに多くの負荷をかける行為)を防ぐことができているのですが、しかしこの“高いガスが優先されるようになってしまう”仕組みのせいで、イーサリアムが人気になり活発になってきた現在では、相場と乖離して価格がつり上がってしまっているわけです。
手数料が高騰するとユーザーは離れていってしまうので、イーサリアムは2020年12月に「イーサリアム2.0」へのアップデートを開始し、PoSへの移行やシャーディング導入によって、こうした手数料の高騰を抑制をしようとしていますが、アップデートの完了まで1年はかかると見られています。
そのため、SolanaやIOSTといった「より安い手数料でDAppsや諸サービスを利用できる、新しいDeFiのプラットフォーム」を目指すプロジェクトが注目されているのです。
またこの場合には、取引承認の分散性とスケーラビリティ(1個のブロックに詰め込めるデータ容量の拡張性)がトレードオフの関係になってしまうという問題もありました。
しかしIOSTは「Proof of Believability」というコンセンサスアルゴリズムを採用することで、マイナーを参入させずに、またPoSやDPoSのような※“The rich get richer”な状況を回避しながら、スケーラビリティ問題を解消しました。
※PoSやDPoSは、仮想通貨をより多く保有する承認者が強い権限を持つ(≒資産の多い人が強い権限を持ってしまう)
<PoBとはどのようなコンセンサス・アルゴリズム?>
PoBは、「Believabilityスコア」というものをベースに、ノード(ネットワーク参加者)をふたつのグループに分けています。取引承認をするノーマルリーグと、ブロック生成をするビリーバブルリーグです。前者より後者の方が多くの報酬を獲得できます。
ノーマルリーグに属しながらビリーバビリティスコアを稼いでいけば、SERVIと呼ばれる貢献度が自分に加算されていき、それが貯まれば貯まるほど、ビリーバブルリーグに配属される可能性が高くなっていく仕組みです。
しかし、資産にものをいわせてお金持ちだけがブロックを生成し続けてしまってはダメなので、IOSTでは一度ブロックを生成したらSERVI(貢献度)がリセットされ、ノーマルリーグからリスタートするという仕組みになっているのです。
ビリーバビリティスコアの採点基準は、次の4つです。
- ノード自体の IOST の保有量
- 取得したServi(ネットワーク貢献度)
- ノードに関する評価
- 過去の行動やトランザクション履歴
ノードとは、ネットワークに繋がっているコンピュータ端末のことです。(スマホやパソコンのこと)
処理速度は、ブロック生成組と取引承認組に分かれることで解消できています。
EDSという独自のシャーディング
「シャーディング?なにそれ?」と思う人も多いでしょう。
シャーディングとは、ノード(ネットワーク参加者)をグループ分けする事を指し、それぞれのグループをシャードと呼びます。
それぞれのシャードに別々の仕事をさせるので、物事を並列処理することができるため作業速度が大きく上がります。
しかしこれは仮想通貨のステーク量(保有量)ごとにグループ分けされており、“ランダムではないため、力の関係が明白に偏る”問題がありました。
そこでIOSTは独自のシャーディングを導入しており、それをEDS(Efficient Distributed Sharding)といいます。
これを端的に説明すると、ランダムにノードを配属するプロトコルを使って、より効率的にノードが分散されたシャードを生成しているのです。
“富める者がより富む(The rich get richer)”状況を回避している、そういう意味で公平なシステムですよね。
マイクロステート・ブロックの導入
マイクロステート・ブロックとは、スーパーマリオでいうところの「中継地点の旗」のようなものです。
そもそもブロックチェーンは、ノードのストレージを圧迫してしまうという問題を抱えています。
ビットコインの場合、1個目のブロックから今ある最新のブロックまでの全てのデータを保存しておかなければならないので、新規ノードやあまり資金のない方の参加は非常に難しくなってしまいます。
そこでIOSTは、特定のブロックを中継地点の旗にすることで、そのブロックから最新のブロックまでのデータを保存するだけで済むようにしたのです。
PoBのところで話しましたが、リーグを2つに分けている上に、そのリーグ間をユーザーは頻繁に移動する(=SERVIのリセット)ので、IOSTにとってストレージ圧迫問題は深刻な課題だったわけです。
こうすれば新規参入障壁はかなり低くなりますし、資金的な意味でも公平なネットワークを作ることができるのです。
スマートコントラクトをつくるときのプログラミング言語がJavaScript
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で“契約”を自動で行うようにするプログラムです。
規定の小銭を入れて、希望のボタンを押すと、商品が出てくる自動販売機もスマートコントラクトと言えます。 この取引の自動化をブロックチェーン上でもできるのです。
しかし、イーサリアムでは「Solidity」というイーサリアム上で使えるスマートコントラクト開発言語を採用しています。そのため、エンジニアはイーサリアムの開発を行うためには新たにプログラム言語を学ぶ必要があります。エンジニアにとって、できる限り馴染みのある言語が良いと思うのは当然でしょう。
それを解決するために、イーサリアムは現在「Fe」というPythonのVyperに似た言語を開発して、スマートコントラクトの開発言語にしようとしています。
翻って、IOSTは「JavaScript」という非常に有名なプログラミング言語でスマートコントラクトを構築できるようにしたのです。
これにより、多くのエンジニアが新しくSolidityを覚えることなく、比較的容易にスマートコントラクトを構築できるようになりました。
IOSTの将来性
IOSTはこれからも価格が上昇するかどうかが、みなさんが気になるところだと思います。
IOSTはVCや有名な暗号資産関連の会社から出資を受けていますし、その取引速度の高さと柔軟性から、数々のオンラインサービスに導入される可能性があります。
JavaScriptでDApps開発できるので、IOSTを使ってアプリを作る企業や個人が増えれば、様々な分野にも大きく進出していくことでしょう。
2021年5月10日時点で、コインチェックのYouTube動画(冒頭にあります)によると、国内では再生可能エネルギー電力の取引システムの実証実験や、精密医療や患者ケアに関するデータ管理の研究開発などが既に行われているようです。
今後もこのように普及していく可能性を考慮すれば、将来性はあると言っても良いのではないでしょうか。
まとめ
IOSTは、ある程度暗号資産関連の技術に詳しくないとなかなか理解しづらい特徴を多く持ちます。
現状、何か有名なサービスに利用されているわけでもないので、ピンとこないのも仕方がないといえます。
しかしコインチェックで取扱が開始され、朝倉未来さんが保有しているということで注目を浴び、有名だから投資するのではなく、“その仮想通貨について正しく理解してから投資する”ことは投資において変わらず重要なことではないでしょうか?
本記事ではできる限り簡単に分かるように努めましたが、最後に今一度ポイントをまとめておきます。
- PoBを採用することで、報酬をゲットできる人をより分散できる=公平!
- ステーク量だけでは評価されないBelievabilityスコア
- EDSという独自のシャーディングによって、さらに公平にグループ分けしている
- マイクロステート・ブロックによって、ノードの負担が激減
- JavaScriptでスマートコントラクトを構築できる
2021年5月10日時点で、このIOSTを取引できる国内業者はコインチェックだけです。
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