2021年は中国が暗号資産を全面的に禁止したことが話題になりましたが、この流れは中国以外でも起きています。アメリカの議会図書館が発表したところによると、2021年の末までに世界では51もの国が暗号資産を禁止することになっていたそうです。
世界には190ほどの国や地域があるので、50を超える国が暗号資産を禁止するということは、4分の1以上の国がすでに暗号資産を禁止していることになります。
なぜこれほどまでに暗号資産を禁止する動きが広がっているのでしょうか、この動きによって今後、暗号資産のマイニングはどこに向かっていくのでしょうか。
なぜ、各国政府はこんなに暗号資産を嫌うのか
暗号資産を禁止している国の中には、中国やインドといった大国も含まれています。この2か国だけで人口規模が30億人くらいになるので、世界人口の半分近くの人たちが暗号資産禁止の環境にあります。
なぜこれほどまでに世界各国の政府から暗号資産が嫌われるのか、その最大の理由は暗号資産が国家のコントロール下にないからです。
世界各国の政府には、自国の通貨を発行する権利があります。それぞれの通貨は法定通貨と呼ばれているように、その国がお墨付きを与えることで通貨としての価値を持ちます。
しかし、実際には紙幣はただの紙切れですし、コインもわずかな金属を使っているだけです。材料としての価値よりもはるかに高い価値を持たせるところが法定通貨の特徴です。このように通貨の製造コストと通貨が持っている市場価値の差は各国政府の利益になるわけですが、その利益のことをシニョリッジといいます。
暗号資産は各国の政府が発行しているわけではなく民間から自然発生的に誕生し、しかも国境の垣根も関係なく世界中を流通しています。シニョリッジがなく、しかも政府がコントロールできない通貨が存在することは、各国政府にとって脅威になるわけです。
特にその性質に過敏になっているのが、中国です。経済発展をしたものの自由がない社会なので富裕層たちは自国に資産を置きたがりません。中国人富裕層が日本の不動産を爆買いしているのは有名な話ですが、その資産逃避先には暗号資産も含まれています。もとよりマイニングの高いシェアを維持してきた中国だけに暗号資産へのシフトはすさまじく、人民元を上回る価値を持った「通貨」が国内を跋扈することを共産党政府がよく思わないのは、当然でしょう。
結局のところ、経済活動の自由が保障されている国は憲法の規定上暗号資産を全面禁止にはしていない(できない)わけですが、それ以外の管理経済の国では暗号資産を禁止したいと考えているのが本音でしょう。
暗号資産禁止によって変わる勢力図
中国の暗号資産全面禁止は、世界の暗号資産勢力図に大きな変化をもたらしました。マイニングのシェアは3分の2が中国だったので、その大部分がなくなるのは大きな出来事です。
その結果、マイニング業者の大移動が起きました。そのことは当マイニングコラムでも述べたとおりです。
中国国内ではマイニングができないので、主にビットコインのマイニング業者が一斉に国外に脱出し、世界各地に向かいました。その中でも印象的だったのは、大手マイニング業者がカザフスタンに移転したことでしょう。
現在、その流れから世界のマイニングシェアはもとから2位だったアメリカが首位となり、今の2位のカザフスタンがランクインしています。3位はロシアということで、マイニングの勢力図に大きな変化がもたらされました。
これからのマイニングビジネスはどこへ行く?
さて、これからのマイニングビジネスはいったいどこに向かっていくのでしょうか。
暗号資産の利用価値が高まり、取引量や通貨量がどんどん増加していることを受けてマイニングの需要が伸びるのは必至です。ビットコインだけでなくイーサリアムやそれ以外の新しい暗号資産についてもマイニングの需要が伸びているので、マイニングビジネス自体の先行きは明るいと思います。
ただ、かねてからある電気代の問題や膨大な電力消費がもたらす環境への負荷などはさらに問題が深刻化していくでしょう。暗号資産自体の将来性はさらに増しているのでマイニングビジネスに参入するメリットは今後も大きくなっていくはず。ですが、それに伴って問題も大きくなるので、いかにそういった問題を克服しつつマイニングの収益を安定的に獲得していくかが課題になりそうです。
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