今日、仮想通貨(暗号資産)の投資ファンド運用大手であるグレイスケール・インベストメンツのマイケル・ソンネンシャインCEOは、米証券取引委員会(SEC)を提訴したとツイッターで発信しました。
昨年は運用資産3兆円を超える残高を保有し、現在でも約1兆7800億円(63万8480BTC)を運用するグレイスケールは、昨年から同社のBTC投資信託(GBTC)のETFへの転換を進めていました。
同社は申請に際して、投資家や学者、業界団体、ビジネスリーダーなどの利害関係者から、1万1465通ものETFを支持するコメントを得てSECに提出。コメントの3分の1は、「先物ETFは承認されているのに、なぜ現物ETFがないのか」という質問が占めていたそうです。
法律面では、社内の法務チームと弁護士事務所とビットコインETFに関する「包括的な議論」を展開。法務戦略役員には、オバマ政権時代に事務総長を務めたベテラン弁護士ドナルド・B. べリリー氏を迎え入れており、脇を固めていました。
そして、SECへの書簡では「現物と先物商品の扱いの違いは行政手続法違反になりかねない」と主張。仮に、SECが申請を却下した場合、法的措置をとる可能性も示唆していました。
こういった精力的な活動を経て、同社はビットコイン投信をETF化する申請書を昨年10月に米SECに提出。これが承認されると、GBTCをオープンエンド型ETFに転換し、GBTC株を買ってBTCと交換できることになります。
先物は認めるが現物は非承認
これまで承認されてきたビットコインETFは、BTC先物を原資産とするモノでした。グレイスケールの申請は、原資産が現物のBTCのため、承認される可能性は低いとされていました。
SECが現物のビットコインETFを承認しない理由として、ビットコインの現物取引市場における監視体制と市場操作対策が、投資家の保護基準に達していないことを指摘し続けていました。
そして昨日、グレイスケールの申請が却下されたことを受け、SECの提訴に踏み切ったという流れとなります。
SECによると、グレイスケールの提案は「詐欺的・相場操作的行為や慣行を防ぐような設計」を証明できなかったため、「投資家と公共の利益を守るため」に申請を不承認したと記載されています。
なお、長年ビットコインETFの承認に向けて動いていたビットワイズ社のビットコイン上場投資商品(ETP)も、同様の理由で非承認としています。
過去のテザー社やリップル社の例を見ても、当局と争うことは問題を長引かせることにつながる気がしますが、1万通以上もの賛同を得ている点は心強く思います。
なお、楽天ウォレットのシニアアナリスト、松田康生氏によると「究極的にETFの可否を決めるのは米国民で、業界と投資家双方が望めばSECもいつまでも反対はできない」とマーケットレポートで解説。
参考:「ビットコインはコモデティ」SEC委員長コメント巡り思惑錯綜
今週に入り、ゲンスラーSEC委員長が「BTCはコモデティ」だと強調し、米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄だとしたことは、現物ETFを認める方向に前進したのではないかとの考えもできるとしています。