2022年2月に始まったウクライナ戦争はすでに2か月以上が経ち、大方の予想を覆して戦争長期化の様相を呈しています。この戦争ではロシア軍の非人道的な攻撃や、国際法に明確に違反するような攻撃がクローズアップされています。
その是非はこの場で論じるまでもありませんが、今回注目したいのはロシア軍が攻撃したことで有名になったウクライナ南部の「ザポロージェ原発(ロシア読みではザポリージャ原発)」です。
前代未聞の原発に対する攻撃で世界の非難を浴びたわけですが、この原発には暗号資産の世界で注目に値する事実があります。今回はそれを紹介しましょう。
ウクライナは原発大国
ウクライナは旧ソ連時代から原発や核兵器施設など、ソ連の核開発拠点が多くある土地柄でした。ソ連崩壊でウクライナが国家として独立する際には核兵器は取り除かれましたが、原発はそのまま残りました。その後もウクライナは原発による電力開発に積極的で、ロシア軍が攻撃をしたことで一躍有名になった「ザポロージェ原発」は世界第3位の発電能力をもつ巨大な原発です。
ウクライナといえば旧ソ連時代のチェルノブイリ原発事故が思い浮かびます。ウクライナ北部にあってベラルーシ国境近くにあるチェルノブイリ原発は大事故を起こし、その後この一帯は人の住めないエリアとなりました。それほどまでの大事故を起こしても原発の開発を進めたのですから、ウクライナがいかに原発大国であるかがうかがえます。
ザポロージェ原発の隣には巨大マイニング施設
さて、そんなザポロージェ原発にはもうひとつの顔があります。それは隣に設置されている巨大なビットコインのマイニング施設の存在です。中国など発電所の隣にマイニング施設を設置するのは電力供給の面で有利になるため、ウクライナ以外でもよく見られる形です。
しかし原発の隣にマイニング施設というのは珍しく、しかもその規模は世界的にも有数のものです。もちろんこれは国家的プロジェクトで、ウクライナは暗号資産マイニングを国の産業にしようという思惑があるわけです。
戦争ですっかり有名になったゼレンスキー大統領も2020年に「ザポロージェ原発に隣接するマイニング施設の計画を推進する」と述べており、戦争勃発まで順調に稼働をしてきました。
経済成長を暗号資産に賭けた国家戦略
ソ連の崩壊後、ウクライナは決して経済的に恵まれた状況ではありませんでした。念願の独立を果たしたものの主たる産業がなく、ヨーロッパと同等の経済水準に追いつくことが国としても至上命題でした。このことは当時のゼレンスキー大統領が強くメッセージを発しています。
マイニング施設は大きければ大きいほど、多大な電力を消費します。それが環境負荷の問題を引き起こすわけですが、原発開発に力を入れているウクライナには莫大な電力があります。それを外貨獲得の手段にするのであれば、確かにビットコインのマイニングは有効な手段といえるでしょう。
戦争勃発後のウクライナと暗号資産
ウクライナ戦争が勃発してからは、ザポロージェ原発にもロシア軍の手が伸びてきました。原発を攻撃するという前代未聞の凶行もさることながら、ロシア軍に占領されてしまったことで原発としての機能も停止、電力供給がなされないようだとマイニングも稼働できてないことでしょう。
もっとも、稼働したとしてもその富をロシアに奪われてしまう可能性もあるわけですが。暗号資産はこのように経済の低迷にあえぐ国や、新興国にとって魅力的な「新しい経済の舞台」です。戦争が終結したあとにはウクライナの復興が重要な議題になるわけですが、ウクライナは引き続き暗号資産による経済成長を目指す可能性は高いと思います。
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