仮想通貨市場のメインプレイヤーは、取引所やマイナーなどの仮想通貨ユーザーと個人投資家です。価格変動は彼らの需要と供給によって成り立っています。
価格変動要因は、ハッキングや法規制などのファンダメンタルズ以外にも、株式や為替などの他の金融商品、さらには投資サロンと呼ばれる投資助言サービスですら影響を与えることもあります。このことから、仮想通市場が安定しているとは言いがたい状況にあります。
また、流動性も乏しくビットコインの1日の取引高は500億円程度と、日本の株式市場でみるとファーストリテイリングの1日の売買代金と変わらないほどです。
こういったことから、機関投資家は仮想通貨市場に参入しにくい状況が続いてきました。
では、機関投資家の参入を妨げている要素と改善案について考察してみましょう。
機関投資家の参入を妨げている要因
機関投資家が仮想通貨市場に参入しづらい要因として、ハッキングリスクや流動性欠如の他に、価値の変動が激しすぎることが挙げられます。
価格が大きく変動した出来事を見てみると、特にハッキングなどのサイバー攻撃によって資産が丸ごとなくなるといった事例があり、その他の金融商品にはこういったことはありません。くわえて、仮想通貨以外の金融商品であれば、資産運用の際にカストディサービスがあります。
しかし仮想通貨は、カストディアンの不足や他にリスク管理として頼れるサービスがないことから機関投資家の参入が妨げられていると言えます。ビットコインETFが承認されない理由の一つとしても、カストディがあるようです。
そのため機関投資家の参入を促すためには、さらに信頼性の高い仮想通貨の保管・運用サービスが必要となり、仮想通貨市場の価値の変動をより緩やかなものに変化させていく規制案の策定も合わせて行っていかなければなりません。
仮想通貨市場の改善点について
法律が定まっていないことや既存の金融商品にあるようなサービスの不足は、仮想通貨の大きな課題です。しかし、法律やサービスに関しては、日本で2017年4月に仮想通貨法案(改正資金決済法)が施法されたように、時とともに改善されていくと予想されます。
2018年10月には、世界でも有数の金融グループであるフィデリティが仮想通貨のカストディサービスの開始を発表しており、大手金融サービスの進出が始まっています。
参考:世界最大級の資産運用グループフィデリティが仮想通貨市場に参戦
また、ウィンクルボス兄弟で有名な仮想通貨取引所であるGeminiは、自社で発行するステーブルコインに保険を付帯しています。
ノルウェーでは、国が発行するデジタル通貨であるCDBCの開発が進められており、仮想通貨の流動性が増したとしても、急激な価値の変動は抑えられていくと予想できます。
そして取引に関しては、プラットフォーム上で取引を行える分散型取引所(DEX)の開設が増加していることから、相対的にリスクは減少する可能性があると言えます。
機関投資家の期待にいつ、どこまで仮想通貨市場のサービスや規制内容が応えられるようになるかかは今のところ不明です。
しかし、2017年末にビットコイン先物が開始されたことを皮切りに、仮想通貨市場に対する法整備やサービスは上で述べたように続々とかたちとなってきています。
数年後には機関投資家が持つ不安を解消し、大手運用会社の資金流入も期待できるのではないでしょうか。
※本記事の意見や予測は、筆者の個人的な見解であり、金融商品の売買を推奨を行うものではありません。
投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。