コロナショックについて今までの流れ
2月頃から、新型コロナウイルスについて多く報道されるようになり、株式市場や経済への影響が拡大してきました。交通機関や飲食店では、感染のリスクが高いため、世界中の人々が外出を控えるようになってきています。
その結果、消費の落ち込みから大規模な不況へと陥ってしまうのではないかという懸念が深まっています。既に飲食をはじめ、交通や観光、娯楽などの多くの業種がダメージを受けています。そして消費の落ち込みは連鎖していくので、一刻も早く感染拡大を食い止める必要があるでしょう。
今年の夏に開催が予定されている東京オリンピックについても、トランプ大統領が「1年延期にすべき」と発言し、延期や中止の可能性も出てきています。国際オリンピック委員会(IOC)は、「予定通り開催を目指す」と表明しましたが、情報が錯綜するなか流動的な状況です。
ウイルスによる感染は、交通網が整備され人の往来が容易になるなか、自然災害にも増して国境を越え急速に広がっています。アメリカをはじめヨーロッパでも感染が拡大するなか、収束への道筋は険しいといえます。
◇新型コロナウイルス感染世界マップ
出所:日経新聞
今後、想定されうる最も恐ろしい事態としては、経済へのマイナス影響から、リーマン・ショックレベルを超える不況を引き起こしてしまうことだと考えています。不安を感じた国民によって現金の引き出しが殺到した結果、銀行が倒産、その融資を受けていた企業が倒産、その企業から仕事を貰っていた下請けも倒産するなど、ドミノ倒しのように経済が崩れていく可能性もあります。
既に日経平均やNYダウ平均などは歴史的な大暴落を見せており、 16日のNYダウ平均は前営業日比で2997ドル安となり過去最大の下落幅を記録。これは当然、リーマン・ショックを越える下落幅となっています。
世界各国の中央銀行は金利を下げたり、市場に資金を供給するなどし、矢継ぎ早に金融対策を打ち出していますが、株価の下落には歯止めが利かない状況となっています。
株価のこれほど大幅な下落はリーマン・ショック以来ということで、比較されることも多いコロナショックですから、このふたつの比較をしていきます。
リーマン・ショックとは
2008年9月15日にアメリカの大手投資会社のリーマン・ブラザーズが経営破綻したことにより世界的な金融恐慌へと波及した現象のことです。
リーマン・ショック発生の原因として、「サブプライムローン」という低所得者向けの住宅ローンの存在がありました。本来、ローンは誰でも簡単に組めるものではないはずでしたが、この「サブプライムローン」には審査が緩い代わりに金利が高いという特徴がありました。その結果「サブプライムローン」は低所得者の間で広がり、住宅の需要が加速。価格も上昇し続け、住宅バブルはどんどん膨らんでいきました。
この「サブプライムローン」は証券化され、世界中の投資家へと販売されました。しかし、これに大きな問題がありました。
低所得者のローン返済が滞り、サブプライムショックが発生したタイミングで、住宅の価値は暴落。低所得者が住宅を売却したとしても、高額なローンを返済できないため、サブプライムローンが組み込まれている債券は不良債権となってしまいました。その後、大手銀行のニューセンチュリー・ファイナンシャルや大手証券会社のベアー・スターンズなどが立て続けに経営破綻しました。そしてリーマン・ブラザーズが負債総額6000億ドルを抱えて、経営破綻を迎えることになりました。
以上が、リーマン・ショックの大まかな流れになります。
主要金融商品の値動き比較
ここから株式(ダウ平均・日経225)、ドル円、原油、米国債10年、VIXについて今回のコロナショックとリーマン・ショックでの値動きについて比較していきます。過去の値動きを参考に、今回のコロナショック相場を乗りこなすヒントになれば幸いです。。
銘柄 | リーマン・ショック | コロナショック |
---|---|---|
ダウ平均株価 | -4990ドル(-43%) | -9363ドル(-32.69%) |
ドル円 | -20円(-19%) | -7.5円(-6.8%) |
原油 | -67ドル(-67%) | -33ドル(-62.58%) |
米国債10年利回り | 3.72 → 2.04(-45%) | 1.95 → 0.31(-84.1%) |
VIX | 25 → 89(300.56%) | 12 → 85(700.08%) |
※コロナショックについては2020年1月1日のレートと3月13日現在までの安値で検証。リーマン・ショックについてはリーマン・ブラザーズの破綻した2008年9月15日から2009年の間につけた安値で検証しています。
これを見るとリーマン・ショックの方が下落率は高くなっていますが、短期的な下落スピードとしては今回のコロナショックの方が早いと言えます。リーマン・ショック時に35%ほど下落した期間(2008年5月:12900ドル → 2008年11月:8058ドル)は半年でしたが、今回の高値から35%程度の下落ではわずか1ヵ月しかありませんでした。
実体経済への波及はこれから
株価は既に大きく下落していますが、今後は実体経済に波及していく可能性があります。日本は、消費税増税の影響で既に19年10-12月期のGDPが-7.1%となっており、現在の状況を考えると、これよりも悪い数字が出てくる可能性の方が高そうです。中国では、既に新車販売数が前年同月比79.1%減、小売売上高は同20.5%減となっています。
個人的には、特に米国金利が2008年と比べて、アメリカの利下げ幅が小さく、米国10年債利回りに関しては、0.8%台にまで下落する事態になっており、利下げによる経済への刺激インパクトが弱いのだと考えます。
実際に16日にFRBが1.0%の緊急利下げを発表した日にNYダウは3000ドルの大暴落となりました。投資家は、それほどまでに経済が厳しい状態だと認識したのか、他の目新しい施策を求めていたのか分かりませんが、新型コロナに対する特効薬は金融緩和ではないというのが答えのようです。
現在、筆者は大学2年生ですが、今回のショックによって失業者が増えたり、就職難になっていく可能性も大いにあると考えています。特に就活生に関しては、内定取り消しの話も出てきており、自身の就職活動の時期にはどうなっているのかという不安もあります。
今週に入り、ヨーロッパの多くの国やアメリカ、オーストラリアが国境封鎖にまで踏み込んでおり、一刻も早く事態が収束することを祈るばかりです。