3-1.合同会社・一般社団法人とは
合同会社とは
合同会社は、2006年の会社法制定で新たに認められた会社組織です。
株式会社とは異なり、合資会社や合名会社と同じく持分会社という形態ですが、社員全員が「有限責任」であるという点で、ほかの持分会社と大きく異なります。
有限責任とは、出資者が出資金額の限度で責任を負う制度です。
個人事業者の場合、事業で負った負債については、個人の財産を全部売却してでも返済しなければなりません。
しかし、有限責任の場合は出資金額の限度でしか返済義務がなく、個人の財産にまで返済義務が及ばずに済みます。
ただし、経営者が会社と連帯して負う債務については返済しなければなりません。
合同会社の利用価値
合同会社のメリットを株式会社と比較して挙げてみましょう。
このうち①が合同会社の最大のメリットといえます(定款については後ほど詳しく説明します)。
それだけ会社設立に要する期間や費用を節約できるのです。
会社の代表者印と資本金が準備できていれば、最短1日でも法務局に登記の申請ができます。
株式会社の場合、公証役場で公証人による法令適合審査を受けて、定款を認証してもらわなければなりません。
それだけで5万円の手数料がかかります。
また、設立登記で支払う登録免許税も、株式会社では15万円かかるのに対し、合同会社では6万円と、はるかに安く済みます。
一方、合同会社のデメリットは次のとおりです。
しかし、合同会社に十分利用価値のあるケースもあります。
まさしく、合同会社は仮想通貨トレードのための法人口座開設にうってつけの会社組織形態だといえます。
株式会社と合同会社の違いと共通点
株式会社と合同会社の違いは、先ほど述べたように組織的な違いにあります。
現在では株式会社でも社長1人だけという会社も増えました。
しかし、元来は出資者と経営者を分離した組織形態ですから、社長1人であっても株主総会を開いて議事録を作成する必要があります。
対して合同会社は、出資者=経営者という組織形態ですから、面倒な手続きがなく、自由な運営が可能です。
また、株式会社の役員には任期(2年から最長10年まで)があります。
そのため、役員の任期が満了すると役員交代がなくても役員変更登記をしなければなりません。
この登記には費用がかかります。
対して合同会社の役員には任期がありません。
したがって、現実に役員の交代が起こらないかぎり、役員変更登記をする必要がありません。
一方、株式会社も合同会社も税法上は、ともに普通法人となります。
両者に税法上の取り扱いの有利不利は全くありません。
したがって、合同会社であっても株式会社であっても適用される税法は全く同じです。
つまり、節税の考え方も何ら変わりません。
法人化による節税効果を株式会社同様、合同会社でも十分に享受できるわけです。
一般社団法人とは
一般社団法人は、2008年12月に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を基に設立された法人組織です。
株式会社や合同会社と違って基本は営利を目的としない法人ですが、株式会社や合同会社のように利益を追求して多額の利益を出しても問題
ありません。
また、一般社団法人の活動範囲も株式会社や合同会社とほぼ変わりません。
株式会社の取締役(合同会社の社員)に当たる一般社団法人の理事が有限責任である点も株式会社や合同会社と同じです。
一般社団法人の利用価値
一般社団法人のメリットを株式会社と比較して挙げましょう。
このうち②が一般社団法人の最大のメリットといえます。
一般社団法人に持分がないことを利用して、財産を一般社団法人に移せば、その後どんなに利益が溜まろうとも相続税が掛からないようにするという手法が横行したため、2018年度の税制改正により親族で支配している一般社団法人には相続税を課税するという改正がありましたが、それ以外にも持分がないということのメリットはまだまだあるのです。
一般社団法人も株式会社と同じく、公証役場で公証人による法令適合審査を受けて、定款を認証してもらわなければなりません。
定款認証の手数料は株式会社と同じく5万円です。
しかし、設立登記で支払う登録免許税は、株式会社では15万円かかるのに対し、一般社団法人では6万円で済みます。
一方、一般社団法人のデメリットは次のとおりです。
法人設立の費用と期間
株式会社と合同会社を比べると、合同会社のほうが株式会社よりも設立費用が安く、設立までの期間が早いと断言できます。
その大きな理由は、合同会社が株式会社に比べて、公証人による定款認証が不要だからです。
逆に、一般社団法人と株式会社は、公証人による定款認証が必要な以上、設立までの期間はそれほど変わりません。
設立費用(実費)と設立に要する期間は次のとおりです。
なお、株式会社や合同会社の定款が電子定款(後述)である場合、収入印紙代4万円は不要です。
一般社団法人の定款は、普通定款であっても電子定款であっても収入印紙代はかかりません。
著者:柴崎照久 / 木村健太
「仮想通貨トレード法人の設立と節税 ~個人投資家のための起業 A to Z」
パンローリング株式会社、2018年10月、90~95ページ
仮想通貨トレードの個人投資家のための法人化の手引き
本書は、仮想通貨トレード法人の、設立手順からメリット、デメリット、設立後の運用、節税方法まで網羅的に解説。
初歩的・不可欠な情報を提供し、個人投資家が法人化を検討する際の疑問や不安を解消する手引書です。
<目次>