ブロックチェーンやDApps(分散型アプリケーション)の認知度の向上に伴い、IPFSというシステムにも注目が集まってきています。
この記事では、ブロックチェーンの課題を解決すると期待されているIPFSという規格の概要や分散型ストレージとは何か、さらにブロックチェーンに及ぼすメリットについて解説します。
IPFS(InterPlanetary File System)とは何か?
IPFS(InterPlanetary File System)とは、分散型ファイルストレージ(以下、「分散型ストレージ」)構築のための規格のことで、Protocol Labsにより開発が進めれられています。
IPFSを日本語訳すると、惑星間ファイルシステムとなります。
次に、分散型ストレージに関して説明します。
IPFSでよく聞く分散型ストレージとは?
分散型ストレージについて説明する前に、ストレージについて簡単に説明します。
ストレージとは、パソコンやスマホのデータを長期保管するための補助記憶装置のことです。ハードディスクやDVDなどもストレージの一つです。
利用されたことのある読者の方も多いかもしれませんが、Google DriveやDropboxなどはクラウドストレージサービスといわれており、ある特定の企業が管理するサーバーに、データ管理を委託するという中央集権的ストレージサービスといえます。
そして、分散型ストレージとは、企業などの中央管理者が一括してデータを管理するのではなく、P2Pネットワーク参加者のパソコンやスマホの空き容量にデータを保存するクラウドストレージサービスのことです。
データを分散して保存しているので、「分散型ストレージ」と呼ばれています。
従来の中央集権型ストレージでは、管理者による不正や、ハッキングによるシステムダウンなどの課題がありました。しかし、IPFSで実現が期待される分散型ストレージではP2Pネットワークを活用してデータを参加者で分散管理しています。
そのため、以下のメリットをもたらすと考えられています。
分散型ストレージ | 中央集権型ストレージ | |
管理者 | なし | 企業 |
コスト | 安価 | 高価 |
データの管理方法 | ネットワーク参加者で分散管理 | 企業などの中央管理者が一括管理 |
懸念点 | 安全性が乏しい | システムダウン |
利用事例 | Winny BitTorrent |
Google Drive/Dropbox |
分散ストレージのメリット1)システムがダウンすること極めて少ない
中央集権型ストレージサービスでは、企業のサーバーがハッキングされたり、アクセスが集中しサーバダウンする可能性がありました。
しかし分散型ストレージではP2Pネットワークを活用し参加者が分散してデータを管理しているので、ある参加者がハッキングされたとしても別の参加者のサーバーにアクセスすることが可能です。加えて負荷も分散されるためアクセスが集中しても、システムダウンが少ないといえます。
分散ストレージのメリット2)安価な運用が可能
中央集権型ストレージでは、大量のユーザーデータを管理するために高額なサーバー代金がかかっていました。しかし分散型ストレージでは特定のサーバーは必要ないので安価に運用することが可能です。
つまり、IPFSでよく聞く分散型ストレージとは、P2Pネットワークを活用したファイルシステムのことで、中央集権型ストレージが抱えていたシステムダウンや高額なサーバー代金といった懸念されている課題の解決が期待されています。
分散型ストレージを構築するIPFSが、ブロックチェーンに与える影響
分散型ストレージを構築するIPFSは、ブロックチェーンの画像などのデータ管理の懸念される点を解決するといわれており、注目が集まっています。ブロックチェーンは手数料の関係上、画像などの大容量ファイルの保存に適していません。
どういうことなのか、詳しく解説します。
IPFSにより画像データを管理しやすくする
ビットコイン やイーサリアムなどのブロックチェーンに送金などの取引データを保存する場合、手数料が必要です。
取引データはデータ容量が小さいので、そこまで問題はないですが、写真や動画、長文テキストとなどの大容量データをブロックチェーンに保存する場合、高額な手数料がかかるといわれています。
そこでIPFSを利用し、大容量データはIPFSへ保存します。そして大容量データを暗号化した少量データのみを堅固なブロックチェーンに保存することで、高額な手数料をかける必要がなくなるのです。
参考:IPFS(InterPlanetary File System)とは?仕組みや技術をわかりやすく解説
今後さらなる活用が期待されるIPFSと分散型ストレージ
IPFSで構築される分散型ストレージサービスを活用した、サービスは既に約80ほど開発されており、世界最大ののP2Pファイル共有システムを提供する、BitTorrent社がIPFSを活用したサービスのテストを2019年に開始。
参考:IPFSを活用したサービス77選~加速するIPFSの利用~
2020年にローンチを目指しているという発表もされ、2020年はIPFS利用加速の年として注目を集めています。加えて、IPFSがイーサリアムのプラットフォーム上のDAppsとの相性が良いといわれており、今後のさらなる活用が期待されています。IPFSを活用したサービスは増えていくと考えられているので、今のうちにIPFSに触れておくのも良いでしょう。
2020年はIPFSにとってどのような年になるのか、一体今後どのように活用されていくのか、IPFSの動向に注目していきたいと思います。