シティバンクのマネージング・ディレクター、トーマス・フィッツパトリック氏による機関投資家向けレポートのビットコインの分析が話題になっています。
同氏によると、現在のビットコインは1971年のゴールド市場に起こったニクソン・ショックを強く連想させる状態であるとし、ビットコインをデジタルゴールドではなく、新しいゴールドと定義しています。
ビットコインの週足チャートを分析すると、ビットコインは論理的には2021年12月までに31万8000ドル(約3300万円)になる可能性があるとしています。
あくまで可能性の話ですが、あと1年で現在の価格(180万円)から18倍以上の上昇余地があることになります。仮にビットコインが3300万円になったとすると、その時の時価総額は570兆円程度になります。
とてつもない時価総額ですね。
これが現実的に起こる可能性がどれだけあるのか、ゴールドの時価総額との対比や、過去の上昇相場における資金流入から考察してみました。
シティバンクのマネージング・ディレクターの方のレポートに関してコメントするのはおこがましいかと思いますが、筆者もビットフライヤーで毎月レポートを出していますので、それなりに仮想通貨の状況を理解しているつもりです。
ゴールドとビットコインの時価総額
さて、ビットコインが3300万円というと、突拍子のない数字のように思えます。
しかしゴールドからビットコインに価値の移転が起こるとすると、有り得ない話でもなくなります。
現在のゴールドの時価総額は約900兆円。ビットコインが3300万円に到達したときの時価総額よりもまだまだ上です。ゴールドは、装飾品や工業用品として使われているため、その価値がそっくりビットコインに移動することはないと思いますが、この数字を見ると意外と起こりそうではないでしょうか。
新規マネーの流入
では、ビットコインへの投資余力はどれだけあるのでしょうか。2017年の仮想通貨ブームの際の資金流入を例に考えてみましょう。
日本暗号資産取引業協会の資料によると、2017年度の入金は約1兆9000億円となっています。
出所:日本暗号資産取引業協会
取引状況を見ると、ビットコインへの投資比率は約50%となります。つまり、約9500億円の資金がビットコインを10万円から240万円までの上昇過程で流入したことになります。
出所:日本暗号資産取引業協会
グローバルで計算してみましょう。
当時、日本はグローバルで30%程度の売買代金を誇っていたことから、他国も同じ比率でビットコインの売買が行われたと仮定すると、資金の流入額は3兆1600億円となります。
ビットコインが10万円から240万円まで上昇した際に、時価総額は1兆3300億円から32兆円まで、約30兆6700億円増加しました。
あくまで確認できている範囲で想定値を算出した計算となりますが、3兆1600億円の資金の流入で時価総額が30兆6700億円増加したのです。流入資金に対しての時価総額の増加率は、ざっと10倍です。
さて、ビットコインが3300万円になった時の話に戻りましょう。
この計算を当てはめると、時価総額が現在の32兆円から570兆円程度まで538兆円増加するために必要な資金の流入は、およぞ53兆8000億円となります。
2017年と比較しても、とんでもない金額です。
現在のグローバルにおける日本のビットコインの売買代金比率は約20%ですから、日本円で10兆円以上の資金流入が必要となります。
日本人の預貯金は1400兆円ですから1%が流入すれば十分に達成できる金額ですが、これらが株式へ移動していることすら緩慢な現在の状況を考えると、ビットコインに向かうことは到底考えづらいでしょう。
では、証券口座はどうでしょうか。 2020年3月時点において、大手証券会社上位10社の顧客預かり資産は330兆円。この3%がビットコインに移動すれば、達成する金額です。それでも厳しい金額であり、あと1年で有り得るのかというと、個人的には厳しいと考えます。
しかしながら、長期的にみると今年は米国企業がインフレヘッジとして数億ドル規模のビットコインの購入を進めていることから、可能性はないとは言えなさそうです。
もちろん、この算出が正しいのかどうかは難しいところですが、やはり新規マネーの流入が増えると時価総額の拡大が加速しやすくなりますので、参考になれば幸いです。
まとめ
- ビットコインの時価総額が10兆円増加するためには、1兆円規模の資金流入が必要
- ビットコインが3300万円まで上昇するための資金流入は、およぞ53兆8000億円
なお、通称ポンプとして有名なモルガン・クリーク・デジタルの共同創業者であるアンソニー・ポンプリアーノ氏は、2029年末までにビットコインの時価総額は金ゴールドを超えると予想しています。