ビットコインに親しんでいただくためには、仮想通貨の影の部分もお話ししなければなりません。マイナーな仮想通貨「DAO」のトラブルについて記しておきましょう。
ビットコインに次ぐ時価総額を誇る仮想通貨「イーサリアム」のテクノロジーを応用して作られたDAOという通貨があります。
誕生は2016年5月。それから2カ月経たない時期に、150億円分発行されたうち50億円分が盗まれる、という事件が起きました。
DAOはイーサリアムの技術を活用した仮想通貨であったため、イーサリアムの価格も一時、暴落しました。
関係者が事件について調査すると、DAOは使用されているプログラムを動作させるためのプログラムコードの検証さえもされていないなど、プログラム上に欠陥があることが分かりました。簡単にいえば、情報には鍵が掛かっていると思っていたのに、鍵は開いていた(盗難できてしまう状態だった)、ということです。
どう処理するかを関係者が検討した結果、ブロックチェーンの流れを1回止め、巻き戻すこと、つまり50億円盗まれる前の状態に戻すことに決まりました。具体的には、イーサリアムのブロックチェーンにはDAOに紐づく取引が記録されていますが、その記録を盗まれる前の状態に戻すハードフォークという手法で復元したのです。それにより盗んだ人は盗んだDAOを使えなくなり、被害者も損をせずに済むことになりました。
とはいえ、盗まれたという事実によってDAOの信用性は棄損し、価格も下がってしまいました。マウントゴックス社の事件は、一個人の単純な横領でしたが、DAOの事件はプログラム上に欠陥があったため、DAOの信用失墜につながったからです。
これは仮想通貨全体としても大問題であり、あってはならないことです。
どういったプログラムで通貨が発行、管理されているかは、プログラムコードで明らかになっており、それを審査することで安全性を確認することはできます。しかし仮想通貨を売買する個人が、すべての通貨をチェックして買うわけにはいきません。
野菜やお魚がお店に並んでいれば消費者は安全なものだと信じて買うのと同じように、仮想通貨が売られていれば暗黙の了解で信用していいものだと捉えるでしょう。
企業が株式市場に上場する際に証券取引所(東京証券取引所など)が審査を行っているように、仮想通貨については各取引所がそれぞれの通貨について扱うか、扱わないかを判断することが非常に重要になってくると思います。証券取引所と同じような機能を、仮想通貨の取引所も担わなければいけないということです。
現実的には各取引所が審査をするのは非効率的なので、自主規制法人を作り、そこがきちんと審査をする、といった案も出てきています。
現状、国内の仮想通貨取引所はビットコインとイーサリアムを扱っている例が多いですが、一部では「ライトコイン」「ドージコイン」といったマイナーなアルトコインを扱っている取引所もあります。発行額も取引している人も少ないため、思うように売買できないなどのリスクがある反面、値動きが大きく大きなリターンが得られる可能性があるなどの投資妙味もあるのでしょう。
今後、取引所は登録制となりますが、金融庁に対しては、どの仮想通貨を扱うかも申請することになります。ビットコインとイーサリアムは実績もありますが、それ以外の通貨を扱う場合には、扱う根拠を求められるなど、ある程度の抑止力が働くことも考えられます。
扱っていい安全な通貨なのかを各取引所が審査をすることが重要ですし、利用者もマイナーな通貨については慎重に付き合うことが重要です。
●犯罪に利用されることはない?
ビットコインをはじめ、仮想通貨の売買には通帳もありませんし、取引記録は暗号化されているので犯罪に使われやすいのではないか…と考える人もいるようです。
実際、海外では過去に米FBIが摘発した闇サイトが決済通貨にビットコインを利用していた事例もありました。
2017年に施行される改正資金決済法では、仮想通貨の取引所に対し、誰がいくら利益を得たか、法定帳票を作成し、国に提出する義務を課します。万が一、犯罪者の資金源になった場合などは、調査すれば分かってしまいます。したがって、仮想通貨だから犯罪に利用されやすいということはないといえるでしょう。
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