2014年。ビットコインの人気に「ほんの一瞬」影を落とす出来事がありました。
当時、世界最大のビットコイン取引所だったマウントゴックス社が突然、取引を全面停止し、経営破綻したのです。新聞などにも大きな記事が掲載され、騒動となりました。
経営破綻の原因は約75万BTCと現金28億円が奪われたためで、当初、それは外部からのサイバー攻撃で奪われたとされていました。取引所が通貨を奪われるなんてあってはならないことで、ビットコインは危ないのではないか…という声もあがりました。
しかしよくよく調べてみると、実際には会社による業務上横領だったことがわかりました。顧客が所有しているビットコインを横領し、ビットコインを買うために顧客が取引所に振り込んだ現金も盗んだのです。外部の犯行ではなく、マウントゴックス社という一取引所による犯罪でした。
2009年に誕生し、12年後半頃から徐々に認知度が高まってきたビットコインは13年4月に200USドル(2万円程度)となり、そこから一気に取引が増え、13年12月には400USドル(4万円程度)にまで人気化していましたが、14年2月にマウントゴックス社が経営破綻を申請した日には、前日の581USドル(5万9250円程度)から、558USドル(5万6900円程度)に急落。しかし、すぐに600USドル(6万円程度)に回復しました。
つまり、マウントゴックス社がビットコインの価格に与えた影響は軽微だったのですが、それは、ビットコインそのものに問題が生じたわけではないし、ブロックチェーンが優れていることに変わりはない、とユーザーたちが判断したからです。
マウントゴックス社は1つの取引所に過ぎず、マウントゴックス社の破綻はあくまで一取引所の不正横領によるものであり、ビットコインの仕組みが否定されたものではない。そう認識されたわけです。
たとえば、円とドルを交換(両替)する両替所の1つが不正をしたからといって、円やドルの信頼は変わりませんよね。それと同じことです。
ビットコインそのもののセキュリティは維持されており、ブロックチェーンに欠陥があったわけではありません。また、ビットコインだからこのような不正が行われたわけでもありません。
ビットコインでは、ブロックチェーンという技術が使われていることをお話ししました。
ブロックチェーンでは、AさんがBさんから1BTC買った、BさんがCさんに10BTC売ったなどの取引の履歴を10分ごとに確定し、記録していきます。10分ごとの取引の記録を「ブロック」にし、それを繋いでいくのが、「ブロックチェーン」です。
10分ごとの情報をブロックにして繋いでいくためには、膨大な計算処理を要する問題を解く「マイニング」という作業が必要で、マイニングで正解を導き出すと、10分間の記録を確定させることができます。
つまり、マイニングはブロックチェーンのメンテナンスを行っているのと同じで、ビットコインのセキュリティの要であり、ビットコインの信用性を保つ重要なことです。マイニングに成功すると、その報酬としてビットコインが与えられます。
誰かが持っているビットコインを盗み出したり、自身が持っているビットコインの量を水増ししたりといった不正を行うには、データを改ざんし、マイニングに成功してデータを確定させる必要があります。しかしマイニングを行うには莫大な処理能力を持つ巨大なシステムを構築して計算をし続ける必要があり、複数の組織が莫大な電気代を負担しながらしのぎを削っています。
そこで勝ち抜くのは容易なことではありませんし、ブロックチェーンは、データを改ざんして確定させるより、マイニングに成功して報酬を受け続けるほうがメリットを得られるように設計されています。
事実上、ブロックチェーンのデータを改ざんすることはできない、といってもいいでしょう。
実際に、2009年の誕生から、ただの1度もデータの改ざんはされていませんし、システムダウンなどのトラブルも生じていません。前述のように、日本の大手銀行がブロックチェーンの応用を検討していることからも、その信用性がわかります。
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